2017年12月27日水曜日

IBM訴訟に見る共謀罪既遂への回路

◆IBM訴訟判決に見るIBMの周到さ

 IBM税務訴訟事件は、米国の世界的大企業による周到かつ超大規模な租税回避スキーム(架空的欠損金の適法的創出)を巡ってのものでした。

 日本国内に新たに用意した中間親会社は、平成21年4月28日に最初の連結納税申告書を提出するものの、その中では、平成14年から平成17年までの欠損金を損金としない内容の申告としており、納税を済ませたのちに、「更正の請求」を行い、欠損金の損金算入が認められるかどうか様子見をする周到さを発揮しているのに、国税当局は、更正の請求に対して、平成21年5月15日に、欠損金の損金算入を認める更正処分をあっさりと出した上で、その後税務調査を行い、平成22年2月19日にその損金算入を否認しています。

 ここから係争開始です。

◆同族会社の行為計算否認の発動

 当局は、法人税の負担を不当に減少させる行為計算だとして、更正処分をしたのですが、判決を見ると、日本橋税務署長が平成22年2月19日付けで原告に対してした更正処分の最も古いものは、平成14年10月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税についてでした。

 明らかに、5年超の期間について対象としています。

 適法的租税回避行為だとすると、行為計算の不当性の追求を受けても、更正処分の期間制限の壁に阻まれて、5年しか遡及できません。

 5年を超える更正処分をするときは、偽り不正条項の適用となるときです。

◆不当から不正への架け橋

 IBMに対してなされた更正処分が、偽り不正の場合の5年超の期間に対応するものだったとすると、行為計算不当追及が偽り不正追求に転移していることになります。

 すべて適法で、行為計算の不当しか問えなかったとしても、偽り不正の場合の過去7年間の遡及更正をする、という行政の実務がここにあるのだとすると、不当から不正への懸け橋は、確かにあるのです。

◆不当から不正への回路

 不当から不正への回路があるのだとすると、そして、各税法における偽り不正の行為の概念が同一だとしたら、テレビや新聞で、節税行為が共謀罪に該当する、と言っていたことが、正しかったことになります。

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