2017年12月31日日曜日

女性の就業率過去最高

 政府は平成29年版「男女共同参画白書」を閣議決定しました。

 これは男女共同参画基本法に基づき作成している年次報告書で、今年は女性活躍推進法施行後の現状と課題を挙げています。

 同白書によると平成28年の15歳から64歳の女性の就業率は66.0%で過去最高となりました。

 これは男女雇用機会均等法が施行された昭和61年(1986年)の53.1%から13ポイント上昇したことになります。

◆地域別の就業率は?

 都道府県別で見ると、平成27年時点の女性の就業率は福井県74.8%が最も高く、次いで富山県72.2%、島根県71.8%となっています。

 北陸地方が高い理由としては2世代、3世代が一緒に住んでいる家庭が多いため子育ての負担が軽減でき、出産後も仕事に復帰しやすい環境が整っていること等が挙げられています。

 また、就業率が低いのは奈良県58.5%、兵庫県60.6%、大阪府61.4%となっています。

 福井県と奈良県の差は16.3ポイントもあることから、地域によってばらつきがあることがわかります。

◆海外では北欧が高い

 また、海外諸国とでは日本の女性就業率はOECD(経済協力開発機構)35カ国中16番目(OECD平均58.6%)です。

 最も高い国はアイスランド81.8%。

 以下スイス、スェーデン、ノルウエーが続き、北欧は女性が働きやすい環境が整っている様子が伺えます。

◆2020年までに女性管理職を30%に

 日本の女性管理職の割合は全国平均13.4%です。

 高知県21.8%、青森県20.3%で20%を超えますが、滋賀県、石川県ともに8%と10%未満も6県あります。

 女性活躍推進法が施行されて1年以上たちましたが、政府は2020年までに女性管理職の割合を30%にするという目標を掲げています。

 数字だけ見るとなかなか難しい状況に見えますが、政府は女性活躍の目標設定や情報の見える化をさらに進めていくとしています。

 各企業がどう取り組むのかが問われるでしょう。

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2017年12月30日土曜日

やむを得ない役員給与の改定・変更 臨時改定事由・業績悪化改定

◆やむを得ない役員給与の改定・変更

 法人税法上、損金算入ができる「定期同額給与」「事前確定届出給与」は、職務執行前(定時株主総会)に「あらかじめ支給時期・支給額が定められているもの」に基づき支払われることを前提としています。

 ただ、給与を「先決め」した後に経営環境が変化することは、よくあること。

 そこで、次の「臨時改定事由」「業績悪化改定事由」による改定・変更が認められています。

◆「臨時改定事由」とは

 「臨時改定事由」とは、次の①や②に類する役員給与を変更せざるを得ないやむを得ない事情をいいます。

①役員の職制上の地位の変更
②役員の職務の重大な変更

 ①は役員の分掌変更があったケースです(例えば、社長が任期途中で退任したことにより副社長に就任した場合)。

 この「役員の職制上の地位」とは定款や総会決議等により付与されたものをいい、「自称専務」などは該当しません。

 ②は組織再編成があったケースなどが該当します(例えば、合併法人の取締役で、その職務内容に大幅な変更がある場合)。

 会社の不祥事に当たり役員給与を一定期間減額するケースも、社会通念上相当であれば、定期同額給与の減額改定・増額改定とも臨時改定事由に当たるとされています。

◆「業績悪化改定事由」とは

 「業績悪化改定事由」とは、その事業年度において会社の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する事由をいいます(減額改定のみ)。

 財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことのほか、次のような場合が該当します。

(業績悪化改定事由の例)

①株主との関係上、業績悪化等について経営上の責任を問われ減額した場合
②取引銀行との借入金返済のリスケジュール協議で要請され減額した場合
③経営悪化の状況下で取引先等からの信用確保のため、経営改善計画が策定され、役員給与減額が盛り込まれた場合

 これらは、会社の経営上、役員給与を減額せざるを得ない「客観的な事情」(例 主要取引先の倒産やリコール発生により業績悪化が不可避)があるかどうかにより判定します。裁

 決では経常利益6%減の会社が行った減額改定が否認された例があります。


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2017年12月29日金曜日

マイナンバーの連携が本格開始

 国内に居住する人全員に割り振られたマイナンバーの情報を行政機関同士で連携する取り組みが11月中旬から本格的に始まりました。

 児童手当の申請や障害福祉サービスの手続きの際に、役所の窓口で自分のマイナンバーと本人確認書類を提示すると、住民票や課税証明書の提出を省略できるようになっています。

 まず853の手続きで提出書類の簡素化ができ、将来的には年金受給手続きなどにも拡大していく方針とのことです。

 役所の窓口で書類が省略できる申請手続きは、認定幼稚園などの利用申請、児童手当、奨学金、介護休業給付金の支給、児童扶養手当、生活保護、障害福祉サービス、障害者に対する医療費の助成、介護保険の被保険者証交付、介護保険料の減免、公営住宅の入居など多岐にわたります。

 それぞれ従来は住民票や課税証明書、児童扶養手当証書などの添付書類が必要でしたが、マイナンバーと本人を証明する顔写真付きの身分証があれば事足りるようになりました。

 マイナンバー制度を使った行政手続の情報連携は、当初は今年7月にスタートする予定でしたが、システム開発の遅れなどから3カ月延期して「10月予定」になり、再び遅れて11月13日までずれこみました。

 ただし一昨年に100万人を超す個人情報の流出があった日本年金機構は、いまだ情報連携の時期は決まっていないなど、マイナンバー制度のうたう「納税者の利便性向上」の実現はまだまだ道半ばという状況です。

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2017年12月28日木曜日

森林環境税、個人住民税に上乗せ案

 市町村の森林整備を支援する財源となる新たな国税「森林環境税(仮称)」の制度設計について検討を進めてきた総務省の有識者検討会が、報告書を取りまとめました。

 地方税である個人住民税に定額を上乗せする形で国が課税徴収し、森林保全が必要な市町村や都道府県に「森林環境譲与税(仮称)」の形で再配分する仕組みで、市町村が山林所有者に代わって間伐を行ったり、林業の担い手を育成したりする事業に活用します。

 森林は土砂崩れを抑え、温室効果ガスの吸収などの役割を果たしていますが、近年は地方山間部を中心に、高齢化や人手不足で手入れが行き届かず荒廃も問題となっていました。

 政府内でも数年前から安定財源が要望されてきており、今年4月に設置された検討会が具体的な制度設計の検討を進めていたところです。

 ただ、森林や水源保全を目的とした同様の税制は、高知県など37府県と横浜市が実施済みで、国が新税を導入すれば「二重課税」になるとの指摘もあります。

 報告書はこの点について、「(政府が構築を進める)新たな森林管理システムの下で市町村が整備に携わるための財源に充てられるため、府県の超過課税に取って代わるものではない」とすみ分ける方針を示しました。

 他方、報告書では具体的な税額や導入時期は示されず、与党の議論で詳細を詰めることになります。

 ただ、政府内では個人住民税の納税者(約6200万人)から1人あたり年500円~1千円を徴収する案が検討されており、仮に1千円徴収ならば、年620億円の税収となります。

 導入時期も2019年度から実施する案と、住民税に上乗せ措置がされている東日本大震災の復興などの財源確保措置が終わった後の24年度からとする案が出ている状況です。

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2017年12月27日水曜日

IBM訴訟に見る共謀罪既遂への回路

◆IBM訴訟判決に見るIBMの周到さ

 IBM税務訴訟事件は、米国の世界的大企業による周到かつ超大規模な租税回避スキーム(架空的欠損金の適法的創出)を巡ってのものでした。

 日本国内に新たに用意した中間親会社は、平成21年4月28日に最初の連結納税申告書を提出するものの、その中では、平成14年から平成17年までの欠損金を損金としない内容の申告としており、納税を済ませたのちに、「更正の請求」を行い、欠損金の損金算入が認められるかどうか様子見をする周到さを発揮しているのに、国税当局は、更正の請求に対して、平成21年5月15日に、欠損金の損金算入を認める更正処分をあっさりと出した上で、その後税務調査を行い、平成22年2月19日にその損金算入を否認しています。

 ここから係争開始です。

◆同族会社の行為計算否認の発動

 当局は、法人税の負担を不当に減少させる行為計算だとして、更正処分をしたのですが、判決を見ると、日本橋税務署長が平成22年2月19日付けで原告に対してした更正処分の最も古いものは、平成14年10月1日から同年12月31日までの事業年度の法人税についてでした。

 明らかに、5年超の期間について対象としています。

 適法的租税回避行為だとすると、行為計算の不当性の追求を受けても、更正処分の期間制限の壁に阻まれて、5年しか遡及できません。

 5年を超える更正処分をするときは、偽り不正条項の適用となるときです。

◆不当から不正への架け橋

 IBMに対してなされた更正処分が、偽り不正の場合の5年超の期間に対応するものだったとすると、行為計算不当追及が偽り不正追求に転移していることになります。

 すべて適法で、行為計算の不当しか問えなかったとしても、偽り不正の場合の過去7年間の遡及更正をする、という行政の実務がここにあるのだとすると、不当から不正への懸け橋は、確かにあるのです。

◆不当から不正への回路

 不当から不正への回路があるのだとすると、そして、各税法における偽り不正の行為の概念が同一だとしたら、テレビや新聞で、節税行為が共謀罪に該当する、と言っていたことが、正しかったことになります。

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2017年12月26日火曜日

消費税調査、ターゲットは不正還付

 国税庁が2016年7月~17年6月に実施した法人税関係の実地調査の件数は、法人税で9万7千件、消費税で9万3千件と、ともに前年から微増しました。

 受け取った消費税より支払った消費税が多いとして還付申告した法人のうち、不正に還付申告したと調査で認定された法人への追徴税額は128億円に上り、前年から一気に4倍に増加しています。

 国税庁では消費税還付の不正への対応を主要な取り組みとして挙げていて、今後の消費税の還付申告は税務調査のターゲットとなりそうです。

 国税庁の資料によれば、法人税、消費税、源泉所得税のそれぞれで、前年より実地調査件数、非違件数がわずかに増えています。

 そのなかでも特に目立つのが消費税で、実地調査件数は3.4%増にとどまる一方で、不正による追徴税額は前年から138億円増えて一気に90%の増加率を示しました。

 この背景にあるのが、消費税の不正還付です。

 最新の16事務年度(16年7月~17年6月)のデータを見ると、消費税還付を申告した法人に対する実地調査の件数は、前年に比べて9.1%マイナスとむしろ減っています。

 にもかかわらず、不正計算による還付への追徴税額をみると、前年の30億円から一気に4倍増となり、128億円となりました。

 非違件数は前年から減っていることから、不正還付1件当たりが〝大型化〟していることになります。


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2017年12月25日月曜日

「半日調査」が2割増

 国税庁によると、2016年7月~17年6月に実施した所得税の税務調査は64万7144件で、前年からわずかに減少しました。

 そのうち、短期間の実地調査で非違を指摘する「着眼調査」は2万1226件で、前年から2割増えています。

 また文書や電話によって来署依頼をする「簡易な接触」は前年よりわずかに減少したものの、約58万件と調査件数全体の9割を占めました。

 脱税の手口なども複雑化するなかで、短期に集中的な調査を行って実績を上げている状況がうかがえます。

 税務調査の種類は大きく4つに分けられます。

 まず高額、悪質な脱税などに時間を掛けて取り組む「特別調査」があり、これには着手から終了まで数カ月かかることも珍しくありません。

 次に、下調べの上で数日かけて現場で調査を行う「一般調査」があり、税務調査と聞いて思い浮かべるような最もスタンダードな手法がこれです。

 さらに短く、半日ほどの現場調査で終える「着眼調査」があり、この3手法を合わせて、現場に赴く「実地調査」と呼ばれます。

 唯一、実地調査に当てはまらないのが、文書や電話によって来署依頼をするなどの方法によって申告を修正させる「簡易な接触」で、これは税務調査の法的手続きが厳格化された2013年以降、激増しています。

 国税庁によれば、今年6月までの1年間に行われた約65万件の所得税調査のうち、「特別調査」と「一般調査」の合計は4万9012件で、前年より1千件ほど増加しています。

 注目したいのは3つ目の「着眼調査」で、前年1万7973件だったところが、今年は2万1226件と、一気に2割増加しました。

 国税庁は近年になり、重点的に取り組むテーマとして税務調査の〝選択〟と〝集中〟を挙げていて、高額な不正が見込まれる案件には人や時間などのリソースを大量投入する一方で、それ以外の軽微な不正については省力化を図っていくというメリハリ化に取り組んでいます。

 半日程度で終わる着眼調査の増加は、国税のそうした姿勢の表れと言えそうです。


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2017年12月24日日曜日

風俗業が申告漏れワーストの2千万円

 事業所得の申告漏れ金額が最も高いのは「風俗業」で、2年連続ワーストだった「キャバレー」を抜き3年ぶりに首位になったことが国税庁の調査実績報告で明らかになりました。

 ここ数年はこの2業種がワーストを争っている状況です。

 2016事務年度の所得税の税務調査で発覚した「風俗業」の申告漏れ所得は平均2083万円(追徴税額519万円)、「キャバレー」は1667万円(同318万円)。

 3位の「プログラマー」は1178万円(同175万円)なので、上位2業種の申告漏れ金額はほかを大きく引き離していることがわかります。

 そのほか、「畜産農業(肉用牛)」、「防水工事」、「ダンプ運送」、「型枠工事」、「特定貨物自動車輸送」などが続きました。

 現金商売であるキャバレーと風俗業は、受け取った現金を売上帳簿に載せずに課税を免れる不正が多く、申告漏れ所得が高額な業種の常連となっています。

 実際、過去10年間ではともに4回ずつワーストという状況でした。

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2017年12月23日土曜日

国税庁:ICTやAI活用した「税務行政の将来像」を公表!

 国税庁は、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を活用した約10年後の「税務行政の将来像」を公表しました。

 これは、情報システムの高度化、外部機関の協力を前提として、現時点で考えられる税務行政の将来のイメージを示したものです。

 実現に向けて、e-Taxの使い勝手の改善等を通じた申告・納付のデジタル化の推進により、納税者の利便性の向上とともにデータ基盤の充実を図り、AI技術等を取り入れながら、段階的に取り組んでいくとしております。

 この背景には、ICTやAIの進展、マイナンバー制度の導入、マイナポータルの本格運用、個人投資家の海外投資や企業の海外取引増加など経済社会のグローバル化、厳しい財政需要による国税職員が減少傾向の一方で、所得税申告件数や法人数等の増加、国際的な租税回避への対応や富裕層に対する適正課税の確保、大口・悪質事案への対応のため、マンパワーの重点的投入の必要があるとみられており、ICTやAIの活用による納税者の利便性の向上と税務行政のスマート化を図ることが将来像にあります。

 納税者の利便性の向上では、マイナポータルを通じて、納税者個々のニーズに合った「カスタマイズ型の税情報の配信」、メールやチャットなどによる相談・回答、AIを活用した相談内容の分析と最適な回答を自動表示する「税務相談の自動化」、確定申告や年末調整に係る情報のマイナポータルへの表示による手続きの電子化、国と地方への電子的提出のワンストップ化、電子納税等の推進など「申告・納付のデジタル化」を目指すとしております。

 また、課税・徴収の効率化・高度化では、「申告内容と財産所有情報との自動チェック」による申告漏れ等の迅速な把握、)是正が必要な誤り事項等を納税者に自動連絡するなど、納税者等に電子メール等により接触を図る「軽微な誤りのオフサイト処理」、AIを活用したシステムによる、精緻な調査必要度判定や納税者への最適な接触方法と要調査項目、優先着手滞納事案の選定等の提示など「調査・徴収でのAI活用」を進めるとしております。

 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年11月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

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2017年12月22日金曜日

小規模宅地特例に照準

 貸付用不動産にかかる相続税を最大5割減らせる「小規模宅地の特例」の適用条件が厳しくなりそうです。

 会計検査院は特例が本来の趣旨に沿わないかたちで利用されていることを指摘し、国に制度の見直しを求めました。

 会計検査院が公表した資料には、小規模宅地の特例を利用して税負担を大幅に減らした相続人の事例が紹介されています。

 Aさんは不動産貸付業に使われていた約200平方メートルの土地の半分を相続。特例を利用して課税価格を半額の2579万9800円に減らし、その土地にかかる相続税額を大幅に圧縮。

 そしてAさんは、申告期限の1カ月半後に土地を6450万円で売却しました。

 Aさんの一連の行為は現行制度の枠内で行われているものですが、会計検査院は「問題あり」という判断を下しています。

 Aさんの利用法は制度の本来の趣旨にそぐわないと見ているためです。

 小規模宅地の特例の趣旨は、居住用または事業用の建物がある土地に重い税金をかけられてしまうと、納税資金を確保するためにその不動産の売却を迫られ、生活や事業のための場所から離れることを余儀なくされるおそれがあるため、税負担を軽減するというものです。

 検査院が特に問題視したのは、不動産貸付業に使われていた土地を相続して特例を利用した人が、その事業を短期で辞めてしまっている点です。

 宅地を手放さずに済むようにする目的の特例が、相続後すぐに売却した人に適用されていることを検査院は問題と見ているわけです。

 検査院の指摘は国の施策に多大な影響を与えます。

 これまでどおりの制度内容だと趣旨にそぐわないケースでも使われていると国に判断され、来年以降の税制改正で新たな適用条件が付け加えられる可能性は十分あります。


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民事調停手続の利用

◆民事調停は最も身近な裁判手続

 取引先や顧客との間でトラブルが生じたとき、まずは話し合いで穏便かつ早期に解決することが最良の方法です。

 もっとも、当事者のみの話し合いでは、話が前進しないこともあるでしょう。

 当事者間では、つい感情的になったり、客観的な視点を持てずに適切な解決内容を見失ってしまったりすることがあるためです。

 そのようなとき、信頼に足る第三者が入って話し合いを進める制度の一つとして、身近に利用できる「民事調停」という裁判所の手続があります。

 裁判所の手続といっても、訴訟のように当事者が主張や証拠を出し合って裁判所が最終的な判決を下す、というものではありません。

 裁判官1名と調停委員2名が当事者の間に入り、事案に応じた円滑な解決を目指して話し合いを進める柔軟な手続です。

◆実際の申立方法や審理の内容

 民事調停の申立てを行うには、申立書を作成して簡易裁判所に提出します。

 申立書の内容も複雑なものではありません。

 現在、裁判所のホームページに申立書の書式が掲載されていますので、これに記入する形で簡単に申立書が作れます。

 申立費用も訴訟に比べて安価ですし、法廷で公開されるものではありませんので、第三者に知られたくない情報も安心して話すことができます。

 また、裁判と言えば弁護士を思い浮かべるかもしれませんが、話し合いによる解決制度ですので、弁護士に依頼せず本人のみでの対応が十分可能です。

 調停委員会の許可を得れば、従業員でも代理人になることができるため、代表取締役本人が出席しなくても良いというのも民事調停のメリットです。

◆調停成立の効果

 話し合いがまとまり、合意に達した場合には、合意内容を記載した調停調書という書面が作成されます。

 調停調書は確定判決と同様の効果が得られますので、相手方が調停調書に記載された債務を履行しなかった場合には、強制執行が可能となります。

 他方で、民事調停が不成立となった場合にも、大きなデメリットはありません。

 その場合には、話し合いによる解決は諦め、訴訟をするか否かを検討すればよいのです。

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2017年12月21日木曜日

今ならぎりぎり間に合う師走節税

 自分の年間所得額が分かるこの時期は、所得から控除できる支出を増やして納税額を抑えることを検討するタイミングでもあります。

 自分が所有者として住んでいた家屋もしくは過去に住んでいた家屋を売ると、譲渡所得から最高3千万円まで控除可能な特別控除制度を利用できます。

 過去に住んでいたマイホームでこの特別控除を適用するには、住まなくなってから3年が経過する年の12月31日までに売ることが条件。

 すなわち、平成26年以降住んでいない家の売却は、今年売るのと来年売るのとでは税金が大きく変わることになります。

 また、貸し出し事業用の建物の修繕費用は所得から控除できるので、アパートが老朽化していて水漏れや外壁の剥離などの問題があるなら、年をまたがずに年内に修繕することで節税につながります。

 ただし、資産価値の向上や建物の利用期間延長のための工事費用とみなされれば、資産の種類ごとに決められた年数に応じて少しずつ償却する「資本的支出」となり、駆け込み節税としての効果は弱まります。

 生命保険や地震保険の1年分の保険料をこの時期に支払うと、来年分も含めて所得控除の対象になります。

 個人事業主であれば退職金積み立て制度「小規模企業共済」も選択肢に加えられることになります。

 このほか、ふるさと納税を利用すると、寄付額から2千円引いた残額を所得税や個人住民税から差し引けます。

 税金の還付や控除を受けられる枠は年が明けるとリセットされるので、今年分を来年に持ち越すことはできません。


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金地金の密輸が前年比1.6倍

 全国の税関当局が2016年7月~17年6月の1年間に摘発した金地金の密輸事件は前年度比1.6倍の467件で、過去最悪を記録したことが財務省の発表で明らかになりました。

 密輸事件は消費増税後に急増していて、日本の税制を悪用した闇ビジネスの実態が浮かび上がります。

 金の密輸事件は2014年の消費税率引き上げを境に急増。

 13年度は8件でしたが、増税後の14年度に177件、15年度に294件と急激な右肩上がりとなっています。

 16年度の467件は3年前の58倍という異常な伸び率で、脱税額でみても3100万円から8億7千万円にまで増えている状況です。

 金は世界共通の価格で売買されていますが、日本での売買には消費税がかかるため、例えば1億円の金塊を外国で購入し、日本で売ると1億800万円を受け取れます。

 そのため海外から金を持ち込む者には、税関であらかじめ消費税分8%を納めることを義務付けていますが、入国時に申告せずに税関をすり抜け、日本国内の買い取りショップに持ち込んで利ザヤを抜く〝ビジネス〟が横行。消費増税によって利ザヤが大きくなっていることから密輸が急増しているというわけです。

 税関を抜けるための手口は様々で、粘着テープで足の裏に金を張り付ける者や、ブレスレットやベルトのバックルに加工して持ち込む者、キャリーバッグのハンドル部分に隠す者が摘発されています。

 そのため今後は、空港などに設置する金属探知機やエックス線検査装置の台数を増やすことが検討されているそうです。


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2017年12月20日水曜日

時事解説】北朝鮮の電磁波攻撃への備え

記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター

 朝鮮半島の緊張が高まる中、北朝鮮の軍事関連のニュースが頻繁に報じられています。

 弾道ミサイルや水素爆弾などの兵器が使われると多大な損害が生じると予想されます。

 なかでも、最近よく耳にするのが電磁波攻撃です。

 ミサイルや水素爆弾などと比べると、どのようなものなのかあまり知られていません。

 電磁波攻撃は人体に対して、影響はないとされてはいますが、他方で電力や交通、通信等、社会インフラに重大な影響を及ぼすため、他の攻撃とは性質が異なります。

 具体的にどのような影響が出てくるのか、知識が皆無であると、実際に攻撃があった場合、著しい混乱をきたすことにもつながります。

 電磁波攻撃というのは、上空で爆発を起こして電磁波を発生させるものです。

 電磁波は機器の誤作動や破壊をもたらすので、強力な電磁波が上空から地上に到達すると、広範囲に悪影響が及びます。

 具体的には、コンピュータなどの電子機器が誤作動し利用できなくなります。

 また、大量の電流が電子回路に一気に流れ、機器が破壊されることもあります。

 場合によっては、発電設備が破壊され停電に至ることも考えられます。

 ほか、鉄道や電話、インターネットなど、さまざまな社会インフラが破壊され、利用できなくなります。

 私たちの日常は、電気が当たり前のように利用でき、携帯電話、インターネット、時刻通りに到着する鉄道など、便利なものに囲まれて生活しています。

 ただ、これら精密機器は戦争で敵国から強力な電磁波を受けることを想定して作られているわけではありません。

 電磁波攻撃は便利になった現代社会の脆弱性を狙った攻撃だといえます。

 北朝鮮の軍事関連ニュースでは、弾道ミサイルや核実験などの報道をよく耳にします。

 加えて、最近、警戒されているのが電磁波攻撃です。

 上空で発生させた強力な電磁波を地上に降らせ、社会インフラなどを機能不全にするものです。

 専門家によると、交通機関の混乱や停電が数カ月続く可能性もあるといいます。

 最悪のケースでは食糧や水不足に陥ることが予想されます。

 電磁波攻撃が注目されるきっかけは北朝鮮が声明で触れたことが挙げられます。

 識者の中には、北朝鮮が電磁波攻撃を実施できるだけの兵力を有するかどうか、懐疑的な見方もあります。

 とはいえ、米国では電磁波攻撃への対策はしっかりと講じられているといいます。

 日本はどうでしょうか。

 これまで、電磁波攻撃についてはあまり報じられてなかったため、対策が後手に回った部分があります。

 ただ、自衛隊の防衛装備品や通信機器は既に電磁波による破壊を避けるため、金属シェルターなどで、機器や部品を覆い保護しています。

 また、政府は内閣官房や防衛省などの関係省庁を集めて対策づくりに乗り出しています。

 一般の企業ではまだ十分な対策がとられているとはいえません。

 病院や運送会社などは、医療機器やトラックの破壊が人命にかかわることもあるので、しっかりとした対策が必要です。

 ほか、一般の企業でも、実際に攻撃されると、何が起こったのか調べたくても、パソコンやスマホ、テレビが使えなくなり情報を得ることができなくなります。

 そこで、事前に、電磁波攻撃について頭の隅に知識として入れておくことがパニックを防ぐうえで大切になります。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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2017年12月19日火曜日

【時事解説】中小企業の人材確保における3つのミスマッチ

 「中小企業白書2017年版」では、中小企業の人材確保において、①採用手段のミスマッチ、②情報のミスマッチ、③情報伝達・獲得手段のミスマッチが存在することを指摘しています。

 同白書では人材を事業活動の中枢を担う「中核人材」と労働力を提供する「労働人材」とに区分して考察を行っていますが、ここでは「中核人材」に着目してみていきましょう。

 まず、採用手段のミスマッチとは、中小企業が有効と考える採用手段と、求職者が有効と考える手段との間に存在するミスマッチを指します。

 中核人材の採用にあたって中小企業は「ハローワーク」や「親族・知人・友人の紹介」を有効と考えていますが、求職者側については年齢層が低いほど「就職ポータルサイト」や「企業のホームページ」を重視しています。

 情報のミスマッチとは、中小企業が求職者に対し重点的に伝えた自社の情報と、求職者が重視した企業情報との間に存在するミスマッチを指します。

 例えば「沿革・経営理念・社風」「技術力・サービス力・社会的意義」については中小企業側が重視するほどには求職者側は重視しない傾向にあります。

 情報伝達・獲得手段のミスマッチとは、中小企業が求職者に対し情報を伝えた手段と、求職者が知りたい情報を得るために有効だと考える手段との間に存在するミスマッチです。

 中小企業側が経営者や採用担当者による面談によって情報を伝える一方で、若年層ほど「各種の求人広告」「企業のホームページ」「説明会・セミナー」といった直接的な選考の前段階を重視する傾向にあります。

 このように中小企業が人材確保を円滑に行うには上記の3つのミスマッチを克服することが求められるのです。

 では中小企業が人材確保を円滑に行うためにはどのような取組みが求められるのでしょうか。

 ここでは「中小企業白書2017年版」でも先進事例として取り上げられているクリーニング業者の取組みについてみていきましょう。

 同社の主戦力であるパートタイム従業員の平均勤続年数は10年と長く、高い定着率を誇っています。

 その背景として、業務の平準化を図る生産体制の工夫、育児や介護といった個々の事情を抱えるパートタイム従業員の働きやすさを実現する企業風土、従業員の能力向上と継続勤務のモチベーションとなる職能等級制度の存在があげられます。

 生産体制の工夫としては、一人の従業員が複数の業務や機械の操作を担当できるよう「多工程・多台持ち」の仕組みを導入しており、従業員同士で互いの業務を補い合い円滑に業務を進めることが可能となっています。

 また、パートタイム従業員を対象とした職能等級制度の構築によって能力に応じた等級に基づき賃金を支給するほか、店長への登用や正社員転換等の制度も設けており、これらの制度を通じてパートタイム従業員の能力向上と継続勤務へのモチベーションアップを図っています。

 上記のような従業員が安心して長く働き続けやすい職場環境の情報は、インターネットや各種メディアに取り上げられるとともに、同社も積極的に求人情報等で情報発信しています。

 その結果、最近では募集人数を大きく上回る応募があるなど、採用の状況も良好です。

 このように働きやすい職場環境づくりを推進しつつ、情報発信を的確に行うことなどによって人材確保が可能となるのです。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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2017年12月18日月曜日

2017年度税制改正:土地の譲渡益に対する重課措置は3年延長へ!

 2017年度税制改正において、重課措置である「土地の譲渡益に対する追加課税制度」の適用停止措置を2020年3月31日まで、また、軽減措置である「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」を2019年12月31日まで、それぞれ3年間延長することが盛り込まれました。

 土地の譲渡益に対する重課措置は、1973年(昭和48年)に、地価の高騰を背景に法人等による土地投機の抑制を図る目的で創設されたもので、同制度は、個人が棚卸資産である土地等又は雑所得の基因となる土地等を譲渡した場合には、所有期間が5年以下の土地等の譲渡による事業所得又は雑所得については、他の所得と分離して、譲渡益の52%(所得税40%+地方税12%)を、譲渡所得は39%(同30%+9%)をそれぞれ重課するものです。

 一方、法人に対する土地の譲渡益については、通常の法人税に加え、所有期間が5年以内の短期所有のものは10%、5年超の長期所有のものは5%が追加課税されます。

 しかし、これらの重課措置は、バブル崩壊以降、地価については長期的な下落傾向にあったため、土地の流動化を通じた土地取引の活性化や有効利用を促進する観点から1998年から停止され、現在も土地取引の停滞が懸念されることから、重課の課税停止措置が延長されたと思われます。

 また、「優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」は、一般的に住宅・宅地開発は事業期間が長く、コストやリスク等が高くなっていることから設けられたもので、公的機関等への土地の譲渡を容易にするほか、一定の優良な事業を行う民間事業者等の用地取得を円滑化し、事業に要する期間の短縮化、事業に係るコストやリスクの軽減を図っております。

 同特例は、所有期間が5年を超える土地等の譲渡のうちに、国や地方公共団体、一定規模の土地の造成を行う業者に優良宅地の造成等の譲渡がある場合に限り、税率が軽減されます。

 該当されます方は、ご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年11月1日現在の情報に基づいて記載しております。

 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


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2017年12月17日日曜日

副業・兼業をめぐる企業の実態とこれから

 今年の3月に政府の働き方改革実現会議で「働き方改革実行計画」が示されました。

 主な項目は
1、同一労働同一賃金等非正規雇用の処遇改善
2、賃金引き上げと労働生産性向上
3、罰則付き時間外労働の上限規制の導入等長時間労働の是正
4、柔軟な働き方がしやすい環境整備等
が挙げられています。

 上記項目のうち4の柔軟な働き方がしやすい環境整備等の一つとして「副業・兼業の推進」がありますが、この事に関して企業の対応はどうなっているのでしょうか。

◆禁止している企業の割合

 今春に働き方改革実行計画案が発表された時には、経済産業省の研究会報告書の発表では「副業・兼業を禁止している」企業の割合は77.2%でした。

 また、就業規則において禁止している企業が48.0%、「副業・兼業に関する規定自身が無い」企業が39.6%(2017年2月リクルート社調べ)でした。

 しかし最近、ある大手情報通信業が1万8千人いる社員の副業を認める就業規則に変更したことで話題になりました。

 働き方の多様化で新しい仕事を通じて腕を磨き本業に良い影響をもたらしてほしいと言う事です。

◆メリットとリスクの両面から考える

 上記のように副業や兼業に関して否定的な企業や、容認しない事が前提で規定自体が無い企業が多いのが現状です。

 副業については「社内で作ることのできない人脈を作ることができる」と言ったメリットもありますが、社内情報流出や個々人の労働時間の増加と言ったリスクもあります。

◆今後の方向性

 厚生労働省のモデル就業規則も改定予定で副業・兼業について「原則容認」とする方向で改定され、推進のガイドラインが示されるようです。

 企業が規則を作る時には原則容認としても届け出や通知の義務は必要とするかもしれません。

 企業としてはメリットとリスクの両方を勘案し、社員の副業・兼業に対して容認か禁止かどのような考えで臨むのか十分検討する必要があるでしょう。

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2017年12月16日土曜日

個人が固定資産等の取得に伴い支出する租税公課の取扱い

はじめに

 法人税では、固定資産等を購入した際に支出する登録免許税、不動産取得税及び自動車取得税等の租税公課は、損金算入の選択が企業経理に委ねられています(法基通7-3-3の2)。

 しかし、所得税では、これら租税公課の取扱いが業務用資産と非業務用資産で異なります。

 そこで、個人が固定資産等の取得に伴い支出する租税公課の取扱いについて見ていきます。

Ⅰ 業務用資産の場合

 個人事業者が支出した業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除きます。)、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税等の租税公課は、その業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されます(所基通37-5)。

 なお、「業務の用に供される資産」には、贈与、相続又は遺贈(以下「贈与等」といいます。)により取得した資産を含むものとされます。

Ⅱ 非業務用資産の場合
 
 個人が支出した業務の用に供される資産以外の資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含みます。)、不動産取得税等固定資産の取得に伴い納付することとなる租税公課は、その固定資産の取得費に算入されます(所基通38-9)。

Ⅲ 減価償却資産の場合

 個人が支出した減価償却資産に係る登録免許税(登録に要する費用を含みます。)をその資産の取得価額に算入するか否かについては、次のとおりとされます(所基通49-3)。

 なお、減価償却資産には、贈与等により取得した減価償却資産を含むものとされます。

① 特許権、鉱業権のように登録により権利が発生する資産に係るものは、取得価額に算入されます。

② 船舶、航空機、自動車のように業務の用に供するについて登録を要する資産に係るものは、取得価額に算入しないことができます。

③ 上記①及び②以外の資産に係るものは、取得価額に算入されません。

Ⅳ 贈与等の際に支出した費用

 「贈与等により取得した資産の取得費等(所法60①一)」に規定する贈与等により譲渡所得の基因となる資産を取得した場合において、その贈与等に係る受贈者等がその資産を取得するために通常必要と認められる費用を支出しているときは、その費用のうちその資産に対応する金額については、前述したⅠ及びⅢの規定により各種所得の金額の計算上必要経費に算入された登録免許税、不動産取得税等を除き、その資産の取得費に算入することができます(所基通60-2)。

おわりに

 個人が贈与、相続(限定承認に係るものを除きます。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除きます。)によって取得した減価償却資産の取得価額については、その減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなして計算することとされますので、減価償却費の計算の基礎となる取得価額及び取得時期は、贈与者又は被相続人の取得価額及び取得時期を引き継ぐこととされます(所法60①一,所令126②)。

 この場合における減価償却の方法の選定に関しては、取得価額を計算する場合の「減価償却資産を取得した者が引き続き所有していたものとみなす」旨の規定は働きませんので留意して下さい(所令120の2①一,所基通49-1)。

 例えば、250%定率法を適用していた減価償却資産を平成24年4月1日以後に贈与を受けた場合には、贈与者が250%定率法による減価償却の方法を適用していても、受贈者において償却の方法を選定していなかった場合には、定額法(個人の法定償却方法)によることとされます。

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住宅ローン控除と租税回避

◆資金に余裕がある人は住宅ローン不可?

 ネットサーフィンしていたら、「租税回避行為に関する一考察」という論文に遭遇しました。

 その論文は、冒頭の部分で、「住宅借入金等特別控除の制度があるが、この制度を利用するために、納税者が、居住用家屋を取得するに当たって、銀行に十分な預金があるにもかかわらず、銀行からの借入によって住宅建設資金を調達し、税額控除を受けた場合、租税回避として否認されるのであろうか」と問いかけをし、その論文の、末尾の部分で、「他に正当な理由がないとすれば、租税回避目的が主たる目的の場合に該当する可能性が大であろう。・・・・住宅借入金等特別控除の制度は税法上の固有概念であり、かつ、課税減免規定であることからすると目的論的解釈からしても否認されることになろう」と書かれていました。

 税務調査にでもなって、先に、資金の余裕は十分という言質をとられてから、偽り不正と指摘されたら、逃げ道を失うことにならないでしょうか。

◆もっと過激に贈与税回避も

 親の預金を担保にした預金連動型住宅ローンだと、預金額より低い住宅ローン残高の金利は0%になり、金利負担がないことになり、毎年の110万円贈与と組み合わせたら、親からの、住宅資金贈与にかかる贈与税課税回避策にもなり、同時に所得税節減策にもなります。

 そうすると、こんなのも勿論、否認される、と言われますね。

◆目的論的解釈って何だ

 全て適法だが、その課税回避行為は制度を濫用している、というのが不当行為計算否認なのに対し、全て適法に見えそうだが、法の趣旨目的に合致することという要件を付加して解釈をすると不適法との結論になる、というのが目的論的解釈です。

 外国税額控除余裕額流用訴訟や旺文社HD訴訟での判決で採用されたと言われています。

 租税法律主義は憲法規範であり、課税要件の法定、課税要件の明確、により課税の予測可能性を確保することを内容としているという原理を踏まえると、条規の文理からは予測できないような解釈になるのは、容易に採用されるべき解釈方法ではない、のではないでしょうか。

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2017年12月15日金曜日

3社に1社が黒字申告

 2016年度に税務申告した全国の法人のうち、黒字と申告した法人の割合は33.2%で前年度(32.1%)より1.1ポイント増となり、6年連続で上昇しました。

 国税庁が10月に発表した法人税の申告事績で分かったものです。

 黒字法人の割合は、08~10年度に3年連続で過去最低を更新しました。

 しかしその後は増加の一途をたどり「3社に1社が黒字」という状況まで盛り返しました。

 また申告所得金額もリーマンショックのあった08年を境に一気に落ち込みましたが、14年度にリーマンショック前の水準を超え、その後も増加を維持している状況です。

 源泉所得税について見てみると、16年度の税額は17兆379億円で、前年度から5.0%減り、7年ぶりに減少に転じました。

 給与所得は2.0%伸びたのですが、配当所得が15.3%減少したことが響いています。

 なお、申告法人286万1千社の所得金額は前年度比3.2%増の63兆4749億円となり、過去最高を記録しました。

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2017年12月14日木曜日

2017年度税制改正:中小企業向け租税特別措置の適用停止に注意!

 2017年度税制改正において、多額の所得があり、財務状況が脆弱とは認められない企業が、中小法人課税の適用対象となっているとの批判をふまえ、一定所得金額を超える事業年度の租税特別措置の適用を停止する措置が盛り込まれました。

 具体的には、「法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度の適用を停止する」とされました。

 なお、この停止措置の適用前に適用期限を迎える租税特別措置についても、2018年度以降の税制改正で適用期限が延長された場合には、この租税特別措置の停止措置の適用対象に含まれます。

 また、この適用停止措置について、設立後3年を経過していない等の事由がある場合には、その計算した金額に一定の調整を加えた金額により判定するなどの判定方法が政令により明らかにされております。

 それによりますと、適用停止となるのは、各種租税特別措置適用前の3年以内に終了した各事業年度(基準年度)の所得金額の合計額をその各事業年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じた金額が「15億円を超える法人」が該当します。

 具体的に、政令から調整事由とそれに対する調整金額をみてみますと、「3年以内に終了した各事業年度」がない、設立後3年を経過していない法人は、基準年度の所得金額の年平均額をゼロとすることができます。

 また、判定する際の所得金額が欠損金繰越控除後の金額とされていることのバランスから、欠損金の繰戻し還付の適用があった場合には、その還付の計算の基礎となった欠損金額相当額を還付対象の基準年度の所得金額から減らす必要があります。

 そして、判定する法人が合併等により設立された場合や、支配関係がある法人を被合併法人等とする合併、休眠法人を合併法人等とする合併が行われた場合には、原則、その合併等に係る被合併法人等の所得の金額を合併法人等の基準年度の所得金額に加算することを明らかにしており、法人の成り代わりによる租税特別措置の適用停止措置逃れを防止するため、基準年度がない場合に年平均額をゼロとする措置は適用されません。

 上記の改正は2019年4月1日以後に開始する事業年度から適用されますので、該当されます方は、ご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年11月13日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


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海外通じた税逃れが続々

 国税当局の調査官が海外資産を持つ人や海外投資をしている人への監視を強めています。

 国税庁の発表によると、昨年度の海外関連の所得税実地調査は3145件。

 そのなかには「どうせバレないだろう」と安易な考えで無申告だった事例もあります。

 会社員Aは海外不動産の譲渡で利益を得たにもかかわらず、税務署にその所得を届け出ませんでした。

 海外での取り引きを把握されることはないだろうとAは高を括っていたわけですが、税務署は国内口座に海外から多額の現金が振り込まれている事実を把握し、何らかの所得が発生していた可能性があると判断しました。

 金融機関を経由した国外への送金や国外からの現金受領が100万円を超えると、金融機関は現金の動きを記した「国外送金等調書」を税務署に提出することになっているのですが、それによってAの海外での所得が発覚したのです。

 また、他国の預金にかかる利子所得を申告していなかったBは、その国の税務当局が日本との租税条約に基づいて利子収入に関する情報を日本の国税当局に提供したことをきっかけに、申告漏れの疑いをもたれて調査を受けました。

 その過程で、海外不動産を売却して譲渡益を得ていたにもかかわらず申告していなかったことが発覚。

 Bは国外に一定の財産を持っている人に提出が義務付けられている「国外財産調書」を提出していなかったため、加算税を5%分加重され、2900万円の追徴税額を課税されました。

 国税当局がいわゆる富裕層の海外資産への課税や監視を強化しているなか、明らかな違法行為である脱税はもちろんのこと、グレーゾーンのスキームにもリスクが伴うことを理解しておきたいところです。

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2017年12月13日水曜日

使用人賞与の損金算入時期

はじめに

 使用人賞与は、原則として実際にその支払が行われた日の属する事業年度において損金の額に算入することとされています。

 ただし、未払賞与については、例外として実際に支払いが行われたものと同様な状態にあるものに限定し、損金算入が認められています。

 そこで、本稿は、使用人に対して支給した賞与の損金算入時期の概要とその実務上の留意点について解説します。

Ⅰ 制度の概要
1 原則(法令72の3①三)
 法人が各事業年度において、使用人に対して支給する賞与のうち、下記2に掲げる賞与以外のものについては、その支払をした日の属する事業年度において損金の額に算入することができます。

2 例外
(1)支給予定日が到来している賞与(法令72の3①一)
 法人が各事業年度において、使用人に対して支給する賞与(使用人兼務役員に対する使用人部分を含みます。以下同じ)のうち、労働協約又は就業規則により定められる支給予定日が到来しているもの(使用人にその支給額が通知されているもので、かつ、その支給予定日又はその通知をした日の属する事業年度においてその支給額につき損金経理したものに限ります。)については、その支給予定日又はその通知をした日のいずれか遅い日の属する事業年度において損金の額に算入することができます。

(2)決算賞与(法令72の3①二)
 法人が各事業年度において、使用人に対して支給する賞与のうち、次に掲げる全ての要件を満たすものについては、その支給額の通知をした日の属する事業年度において損金の額に算入することができます。
① その支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
② ①の通知をした金額を通知した全ての使用人に対しその通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内に支払っていること。
③ その支給額につき①の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

Ⅱ 支給額の通知(法基通9-2-43)
 法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、上記Ⅰ2(2)に掲げる「通知」には該当しないこととされます。

Ⅲ 同時期に支給を受けるすべての使用人(法基通9-2-44)
 法人が、その使用人に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマー又は臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除きます。)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに上記Ⅰ2(2)に掲げる支給額の通知を行ったかどうかを判定することができます。

おわりに
 上記Ⅰ2(2)に掲げる決算賞与を未払計上する場合には、実際に通知書を作成して使用人に交付し、その写しに使用人の確認印を受けるなど使用人に対する通知の事実を後日立証できる様にすべきでしょう。

 また、①使用人に対して支給額の通知を行ったとしても支給日までに退職した者に対しては賞与を支給しなかったケース、②結果的に退職した者がいなかったため通知した金額を全額支給したケースについても、就業規則などでその通知した支給額について退職者には賞与を支給しないこととされている場合には、その未払賞与は、損金の額に算入することはできません。

 特に、社会保険労務士が作成している就業規則の基本書式を採用している会社においては、税務調査で問題となっているようですので留意して下さい。

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2017年12月12日火曜日

法務省:2018年度税制改正要望を公表!

 法務省は、2018年度税制改正要望を公表しました。

 それによりますと、所有者不明の土地が問題視されており、相続登記が未了となっている要因の一つとして、相続登記に係る費用の負担が指摘されることから、相続登記促進のため、登録免許税を免除する特例措置の創設を要望しております。

 法務省では、2017年6月までの不動産登記簿における相続登記未了土地調査を実施しました。

 約10万筆の土地について所有権の登記が受け付けられた年月日を確認し、現在に至るまでの経過年数を調査したところ、最後に所有権の登記がされてから50年以上経過しているものが、大都市においては6.6%、中小都市・中山間地域においては26.6%明らかにされました。

 同様に、民間有識者による所有者不明土地問題研究会の所有者不明土地割合の全国推計結果によりますと、所有者不明土地が全国の20.3%を占め、面積にして九州よりも広い、約410万ヘクタールにのぼるといいます。

 相続登記は義務ではなく、登録免許税等もかかるため、相続時後回しにされ、そのまま長期間放置されて所有者不明土地問題の要因の一つとなっております。

 所有者不明土地への対応は、公共事業用地の取得、農地の集約化、森林の適正な管理など、多くの自治体が直面する課題となっており、所有者不明土地があることで、市町村において事業の中止・中断や対象用地の変更を迫られるなど、土地の利活用の妨げになっております。

 そのため、相続登記が未了のまま放置されている土地又は放置されるおそれのある土地については、登録免許税を免除することにより、所有者不明の土地問題に対応するとしております。

 具体的な特例措置の内容は、下記の適用要件に係る所有権に関する登記の申請について、登録免許税を免除するとしております。

 ①相続発生から30年以上経過している土地に関して当該相続を起因とした登記を申請した場合、当該所有権についての相続登記にかかる登録免許税を免除

 ②課税標準額が一筆当たり20万円以下の土地に関して相続を起因とした登記を申請した場合、その登録免許税を免除

 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年10月9日現在の情報に基づいて記載しております。

 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


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2017年12月11日月曜日

給料の9割差し押さえで訴訟

 さいたま市による違法な税金の取り立てで身体的・精神的な損害を受けたとして、市内の男性(68)と長女(38)が市を相手取り、税金滞納差し押さえ処分の無効と慰謝料を求めて計1420万円の国家賠償請求訴訟をさいたま地裁に起こしたことが分かりました。

 男性は1カ月の収入35万円のうち32万円を市に取り立てられたそうです。

 原告側の弁護士によると、税金の違法な取り立てを理由とする訴えは県内初。

 男性は事業の失敗などから負債を抱えて地方税などを滞納。

 納期限を超えても分割して納められる「分納」を申請し、2015年5月ごろから月18万円ずつを納めていました。

 しかし男性側によると、昨年1月ごろに妻が市に虚偽の説明を受けて承諾書を書かされ、以後は32万円を徴収されるようになったとのこと。

 男性は今年6月分までで計448万円を差し押さえられ、長女も15年12月に給料日に口座の残高全てを差し押さえられました。

 男性は生活のために深夜まで働き、そして体調を崩して緊急搬送されました。

 男性側の「市の取り立ては国税徴収法の上限を超えている」との訴えに対し、さいたま市は「訴状を見ていないのでコメントできない」としています。

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2017年12月10日日曜日

国税庁:「契約書や領収書と印紙税」の情報を公表!

 国税庁は、同庁ホームページに「契約書や領収書と印紙税」についての情報を公表しました。

 印紙税は、契約書や手形、領収書などの文書に課税される税金で、文書の作成者が定められた金額の収入印紙を文書に貼り付け、消印することで納付します。

 税額は文書の内容や文書に記載された金額に応じて定められており、例えば「不動産売買契約書(第1号文書)」や「工事請負契約書(第2号文書)、「売上代金の領収書(第17号の1文書)」などは、その文書に記載された金額に応じて納税額が異なります。

 2017年度税制改正において、租税特別措置法の一部改正により、「指定災害の被災者等に対する災害特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税措置」及び「自然災害の被災者が作成する不動産の譲渡に関する契約書等の印紙税の非課税措置」が設けられました。

 具体的には、金融機関が激甚災害の被災者等に対して行う金銭の特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書のうち、災害発生日から5年を経過する日までに作成されるものについては、印紙税を課さないとしました。

 また、被災者生活再建支援法が適用される自然災害の被災者等が、自然災害により滅失した建物の敷地や損壊した建物を譲渡する場合等に作成する「不動産の譲渡に関する契約書」又は「建設工事の請負に関する契約書」のうち、その災害発生日から5年を経過する日までに作成されるものについては、印紙税を課さないとしました。

 上記の改正は、2016年4月1日以後に作成された各契約書について適用します。

 さらに国税庁ホームページに掲載された情報には、「金銭又は有価証券の受取書」の非課税範囲の拡大が挙がっております。

 これは、「金銭又は有価証券の受取書」について、以前は受取金額「3万円未満」のものが非課税対象とされておりましたが、2014年4月1日以降に作成されたものについては「5万円未満」と非課税範囲が拡大されました。

 そして、「不動産の譲渡に関する契約書」及び「建設工事の請負に関する契約書」のうち、一定要件に該当するものに係る印紙税を軽減する措置が、2018年3月31日まで延長された点も説明しておりますので、該当されます方は、ご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年9月8日現在の情報に基づいて記載しております。

 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


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2017年12月9日土曜日

平成29年度地域別最低賃金

◆最低賃金引き上げ額平均25円で過去最大

 平成29年地域別最低賃金改定額は中央最低賃金審議会で賃上げ額の目安が公表され、各都道府県労働局長の決定により10月1日より順次発令されます。

 改定額を見ていくとAランクの6都道府県は目安通り26円引き上げられ、東京、神奈川に続き大阪も900円を超えました。

 Bランクの11府県も目安通り25円引き上げられ、三重、広島、滋賀、栃木の4県が新たに800円以上。

 一方Cランクは新潟が目安より1円高い25円の引き上げ。

 他の13道県は目安通り24円の引き上げで、北海道と岐阜が新たに800円台に乗せました。

 Dランクでは鳥取、宮崎、沖縄が目安より1円高い23円の引き上げで、高知、沖縄と福岡を除く九州6県が737円で並びました。

◆平成35年度には1000円まで引き上げ?

 最低賃金は近年引き上げの流れが続いていて、時給額のみで表示されるようになった平成14年度には全国加重平均額は663円でしたが、昨年度に初めて800円を超えました。

 政府は全国加重平均で最低賃金3%程度引き上げ1000円を目指しており、このままですと平成35年度には1000円に達する事になり、中小企業には重い負担となってきます。

 平成29年の改定額は以下の通りです。

A.26円改定
東京 958円 大阪 909円 愛知 871円 千葉 868円 神奈川956円 埼玉 871円

B.25円改定
茨城 796円 京都 856円 静岡 832円 三重 820円 滋賀 813円 栃木 800円 長野 795円 富山 795円 広島 818円 兵庫 844円 山梨 784円

C.24円改定
北海道810円 宮城 772円 群馬 783円 新潟 778円 石川 781円 福井 778円 岐阜 800円 奈良 786円 和歌山777円 岡山 781円 山口 777円 徳島 740円 香川 766円 福岡 789円

D.22円、23円改定
青森 738円 秋田 738円 岩手 738円 山形 739円 福島 748円 愛媛 739円 高知 737円 島根 740円 鳥取 738円 長崎 737円 佐賀 737円 熊本 737円 大分 737円 宮崎 737円 鹿児島737円 沖縄 737円


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2017年12月8日金曜日

日本証券業協会等:2018年度税制改正要望を公表!

 日本証券業協会、投資信託協会及び全国証券取引所協議会は、2018年度税制改正要望を公表しました。

 それによりますと、家計の自助努力による資産形成を支援するための税制措置や世代間の資産承継を円滑化するための税制措置等を求めております。

 家計の自助努力による資産形成の支援では、一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAが、国民の中長期的な資産形成手段として幅広く普及・定着するよう要望しております。

 現行、非課税期間5年の終了時には一般口座への移管が原則とされ、特定口座に移管を行う際には、証券会社等に移管依頼書(書面)の提出が必要となっておりますが、これを特段の手続きなしに特定口座への移管を原則とするなどの口座開設や勘定変更及び非課税期間終了時の移管等に係る手続きの簡素化や、ジュニアNISAの払出し制限の緩和及び贈与税の基礎控除額の特例等の措置を講じることなどを挙げております。

 また、NISA制度が国民の安定的な資産形成に資する恒久的な制度となるよう、確定拠出年金や財形貯蓄同様に根拠法(NISA法)を制定することを挙げております。

 さらに口座開設期間の恒久化、非課税期間の恒久化、スイッチング(取得した上場株式等の売却代金の範囲内での他の上場株式等の再取得)を認めること、NISAに係る制度の一本化を検討する場合には、現行のNISA制度の更なる活用を前提とすることなどを挙げております。

 世代間の資産承継を円滑にするための税制措置としては、上場株式(ETF及びREIT等を含む)及び公募株式投資信託の相続税評価額の見直しや、急激な経済環境の変化に伴う株価変動リスク等を考慮し、上場株式並びに公募株式投資信託について、相続発生から相続税の申告までの間に著しく価格が下落した場合には、下落後の価格を相続税評価額とする救済措置を講じることなどを求めております。

 その他、市場への継続的な成長資金の供給を促進するための税制措置として、金融所得課税一体化の促進等や上場株式等の譲渡損失の繰越控除期間(現行3年間)の延長、配当の二重課税排除の徹底や投資信託・投資法人制度等の拡充などを図ることが盛り込まれております。

 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年10月9日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。


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2017年12月7日木曜日

日本商工会議所:2018年度税制改正に関する意見を公表!

 日本商工会議所は、「2018年度税制改正に関する意見」を公表しました。

 それによりますと、中小企業の活力を最大限引き出す税制の整備が必要として、団塊世代の経営者が大量引退期を迎える「大事業承継時代」を乗り切るための税制措置の抜本的拡充、所得拡大促進税制や少額減価償却資産の特例の拡充のほか、商業地等に係る固定資産税の負担調整措置の見直しへの反対などを主張しております。

 中小企業の価値ある事業を次世代に承継し、新たな挑戦を促す税制の実現のため、主に
① 諸外国並みの事業承継税制の確立
② 事業承継のために後継者へ自社株を生前贈与した場合は、大幅な評価減・軽減税率を適用
③ M&Aを後押しするインセンティブ税制の創設
④ 所得拡大促進税制の複雑な適用要件の緩和・拡充
⑤ 中小企業の生産性向上に資する、少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の拡充・本則化を掲げました。

 上記①では、成長に必要な経営人材の登用を制限する代表者要件・筆頭株主要件等の見直しや、事業環境の変化への対応を制限する事業継続要件の見直しなどを、③では譲渡所得税の特別控除特例などを、④では教育訓練費等の対象化を要望しております。

 さらに地域活性化や企業の生産性向上・活力強化に資する税制措置として、商業地等に係る固定資産税の負担調整措置の見直しに反対しております。

 また、域内消費を喚起する中小企業の交際費課税の特例の延長・拡充、e-TaxとeLTAXの統合・連携強化による申告・納税手続きのワンストップ化の推進、申告受付時間の拡大(土日祝日・年末)、外形標準課税の中小企業への適用拡大など中小企業の経営基盤を毀損する税制措置への反対などを主張しております。

 そして、消費税率引上げに伴う課題として、持続可能な社会保障制度の確立や少子化対策の充実・強化のため、2019年10月の消費税率10%引上げを確実に実施することや、中小企業に過度な事務負担を強いることになる軽減税率・インボイス制度は導入すべきではないこと、軽減税率の導入はゼロベースで見直すとともに、インボイス制度は、廃止を含め、慎重に検討すべきことなどを求めております。

 今後の税制改正の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成29年10月2日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。



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2017年12月6日水曜日

契約書の作成意義とは

◆契約書がなくても契約は成立する

 契約について『合意書や契約書がない場合でも合意や契約は有効か』という疑問が浮かびます。

 民法では、契約は当事者間の意思の合致により成立するとされています。

 例外として、金銭消費貸借契約の場合に意思の合致だけではなく実際の金銭の交付がなければならない、保証契約は書面等によらなければならないなどの特例はありますが、原則としては、書面がなくても契約の「申込」(発注)と「承諾」(受注)の意思表示が行われた時点で契約は成立するようです。

◆なぜ契約書を作成するのか

 それでは、なぜ契約書を作成する必要があるのでしょうか。

 それは、主として、後々、紛争や裁判になった際に、契約締結の有無、また、契約内容や合意事項を証明することができるようにするためです。

 この点、契約書でなくとも合意内容を示すものであればよいため、メールやFAXのやりとりなども契約書に代わる証拠として有効となることがあります。

 取引の相手に契約書の作成をお願いしにくい、という場合には、単なる口頭合意だけではなく積極的にメールなどで合意内容を残しておくと役立ちます。

 とはいえ、契約書は社長などの最終決裁者がその内容を確認したうえで押印していることが前提となりますので、やはりメールよりはるかに高い証明力を有します。

◆契約書に何を書くか

 契約書の作成は面倒、と思われる方も多いかもしれません。

 しかし、実は互いの債務の内容を特定して記載するだけの契約書でも多くの紛争を予防できます。

 このとき、「誰が」「誰に」「いつ」「何を」「どうするか」を具体的に記載します。

 例えば、売買契約書であれば「甲は乙に対し、平成29年10月1日までに、商品〇〇を引き渡す。」「乙は甲に対し、平成29年10月末日までに、売買代金として〇〇円を支払う。」のように債務の内容を具体的かつ明確に特定して記載します。

 これだけでも、トラブルが起こった際にどちらが契約違反をしているかが明確になり、紛争の拡大を防止することができるのです。


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平成29年分年末調整の留意点

 年末調整の時期となりました。

 この年末調整は、毎月の給料や賞与から源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めなければならない税額とを比べ、その過不足額を精算する手続です。

 この手続により、大部分の給与所得者は、改めて確定申告をする必要はなくなります。

◆給与所得控除額の改正

 今年の改正は、給与所得控除額の改正のみで、その内容は、給与収入1,000万円超の場合の給与所得控除額は220万円が上限とされたことです。

 この改正に伴い、年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表も改正されています。

◆平成30年分の扶養控除等(異動)申告書(以下、同申告書)

 ところで、同申告書の提出は、年の最初の給与等の支払いを受ける日の前日までに給与等の支払者に提出することになっていますが、実務においては、前年の年末調整の際に同申告書を受理することも多々あります。

 この同申告書ですが、平成30年分から配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正に伴って、同申告書の記載欄に、源泉控除対象配偶者、同一生計配偶者の欄が加わり、平成30年1月以降の給料等の支払いの際には、配偶者が源泉控除対象配偶者、また、同一生計配偶者が障害者に該当する場合には、それぞれ扶養親族の数に一人を加えて源泉徴収することになりました。

 そこで、源泉控除対象配偶者、同一生計配偶者の該当者の要件について留意が必要となります。

 前者は居住者の合計所得金額が900万円以下で生計を一にする配偶者の合計所得金額が85万円以下の人、後者は居住者の合計所得金額には制限がありませんが、生計を一にする配偶者の合計所得金額が38万円以下の人です。

 いずれも青色事業専従者等は除かれます。

 なお、これら合計所得金額ですが、同申告書を提出する日の現況により判断することとなります。

 年末調整の際に提出を受ける同申告書の記載欄を今一度確認しておきましょう。

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2017年12月5日火曜日

今年2度目の育児・介護休業法改正

◆2017年1月からの改正

 この10月より育児・介護休業法の改正されました。

 改正は今年2度目となりますが、まず1月に改正された内容を振り返ってみましょう。

 1月からの改正点は妊娠、出産、育児期や家族の介護が必要な時期に男女ともに離職する事なく働き続けられるように仕事と育児の両立を目指して次の8点が見直されました。

①介護休業の分割取得
②介護休暇・子の看護休暇の取得単位緩和
③介護の為の短時間勤務等取得条件の緩和
④所定外労働免除請求は介護終了時迄可能
⑤有期契約労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
⑥介護休業等の対象家族の範囲の拡大
⑦育児休業の対象となる子の範囲の拡大
⑧マタハラ、パタハラ防止措置の義務付け

◆10月からの改正点

 上記に引き続き10月の改正では子が保育園に入所できず退職を余儀なくされる事態を防ぐため、以下の3点が改正されます。

①最長2歳まで育児休業の再延長が可能に
②出産予定の労働者や配偶者がいる人に育児休業等の制度の周知の努力義務
③育児目的休暇制度導入の促進の努力義務

 1年に2度の改正が行われるのは大変異例なことですが、政府が推し進める「働き方改革」の中でも育児・介護による離職の防止は重要なキーワードとなっており、対策が急がれています。

◆政府の対策と社内整備

 待機児童問題に関しては2013年からは様々な措置が行われてきました。

 これにより保育利用率は年々上昇しているものの待機児童はなお2万人を上回る水準で推移しています。

 1億総活躍社会の実現として多様な働き方を認める制度や法改正は今後も続くでしょうが法改正の趣旨は法律遵守だけが目的ではなく、働く人の意識を高め能力を最大限に生かし限られた時間で成果を作りだす生産性の高い組織となる事でしょう。

 法改正規定の整備だけでなく柔軟な労働時間や休暇制度等も組み合わせて従業員全体の満足度にも資する制度でありたいものです。



2017年12月4日月曜日

人気職業YouTuberの実態とは?

 子どもが将来なりたい職業に変化が起きています。

 従来、人気職業ランキングの上位には、スポーツ選手やお医者さん、女子ですとケーキ屋さんなどが常連でした。

 ところが、近年ではYouTuber(ユーチューバー)がランクインするようになり話題となりました。

 YouTuberとは、動画投稿サイト、YouTubeに自分で制作した動画を公開する人をいいます。

 投稿する動画はさまざまです。

 「○○をやってみた」など、自身が興味を抱いたことを実行し、顛末を撮影するものが定番としてあります。

 最も有名なYouTuberの一人、ヒカキン氏は商品の紹介をよく投稿しますが、投稿により商品の売上が伸びるといわれています。

 また、同氏が動画内で座っていたソファーが話題となり、同じ型のものを買う人が現れるくらい、影響力を有しています。

 また、マックスむらい氏は、ゲームを実際にプレイし実況する動画が人気で有名になりました。

 ほかにも、はじめしゃちょー氏など、有名なYouTuberがたくさん生まれています。

 YouTuberの主な収入源は広告収入です。

 動画を観た人が、動画の横にあるインターネット広告をクリックすると、動画を投稿した人にお金が振り込まれる仕組みになっています。

 また、人気YouTuberになれば、企業とのタイアップも収入源となります。

 もちろん、動画投稿だけで生活できるのは、ごく一部ですし、収入の額は動画の再生回数や広告の単価に左右されるので不安定なのが現状です。

 それでも、なかには年収が1億円を超える人も現れ、「YouTuberは好きなことをして稼げる」として子どもたちの間で夢の職業となりました。

 最近、子どもの将来なりたい職業に、上位ランクインして話題となったYouTuber。

 具体的にどのようにして収入を得ているのでしょうか。

 数年前、動画投稿サイトが広がりを見せたころは、投稿で収益を得るシステムは確立されていませんでした。

 2011年、YouTubeでは、一定の条件を満たす人を対象に、動画を閲覧した人がインターネット広告をクリックすれば、投稿者は広告収入を得られるシステムを設けました。

 ただ、これは、動画を観てもらうだけでは収入になりませんが、隣にある広告をクリックしてもらえれば収入になります。

 動画再生の回数が多いほど、広告のクリック回数も増えるので、結果、広告収入も増えるようになります。

 このほか、有料閲覧のシステムや、企業とのタイアップで企業からタイアップ料をもらうといった収入を得る仕組みもあります。

 また近年は、UUUM(ウーム)株式会社といった、YouTuberを対象とした事業(YouTuberのマネジメント、動画制作サポート)を営む会社も現れました。

 この会社は、人気YouTuberのヒカキン氏などが所属し、彼らの制作サポート、スケジュール管理などをしています。

 ほか、マックスむらい氏は、人気ゲームを自身でプレイし、実況する動画が人気です。

 友人とともにゲーム関連会社を興し、同氏が役員を務める会社は2015年に東証マザーズ市場に上場しています。

 YouTubeはもはや趣味だけでなく、ビジネスの場にもなっています。

 しかし、UUUMのように、事業を展開する会社はまだ数多くありません。

 ということは、YouTuberをめぐるビジネスの分野はチャンスがまだ多く残っているという見方もできます。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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2017年12月3日日曜日

個別労働紛争件数から見る紛争と解決

◆平成28年度個別労働紛争件数は高止まり

 今年も厚生労働省から「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が6月に発表されましたが、総合労働相談件数は113万741件で前年に比べると9.3%増となりました。

 件数が100万件を超えるのは9年連続であり、高止まりしています。

 労働相談制度を知る人が増え、相談者も黙っていないで職場に改善を求める動きも広がってきている事が背景にあるようです。

◆「いじめ・嫌がらせ」が問題のトップ

 中でも大きな問題となっているのが「いじめ・嫌がらせ」です。

 民事上の個別労働紛争の相談件数(7万917件)、助言指導の申出(2206件)、あっせんの申請件数(1643件)のすべてでトップになりました。

 「いじめ・嫌がらせ」は近年、毎年労働紛争のトップ理由であり問題視されています。

 これは「ハラスメント」と同じものと考えられます。

 例えば厚生労働省の「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」(今年4月公表)においても3人に1人が「パワーハラスメントを受けた経験がある」との結果が示されていて、企業での対策は必至となっています。

◆労使紛争防止の為に

 最近は「個別の労働者対企業」のトラブルがマスコミに取り上げられ、企業イメージが損なわれると言った事も起きています。

 ハラスメントをめぐる紛争を防ぐためにはトラブルを未然に防ぐ適切な対策を講じる事が大切でしょう。

 パワハラの予防・解決に向けた取り組みを行っている企業で働く従業員は、パワハラを受けたと感じる比率や心身への影響があったとする比率が相対的に低くなる傾向にあります。

 この取り組みにより職場環境が変わる、対話が活性化する、休職や離職者が減る等の付随効果も見られるようです。

 パワハラの予防・解決の為の効果が高い取り組みとして「相談窓口の設置」「管理職・従業員向け研修の実施」を挙げている企業が多く、相談窓口を設置している企業は73.4%と言われています。

 このように複数の取り組みを実施する事が職場環境改善に繋がっています。

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2017年12月2日土曜日

所有者不明の土地を公共利用

 全国で400万ヘクタール以上あるといわれる所有者不明の土地をめぐり、国土交通省は、新たに「利用権」を設定して、所有者の同意を得なくても公益性のある事業に利用できるようにする新制度を創設する方針を明らかにしました。

 来年の通常国会に特別措置法案を提出することを目指します。

 国交省の案は、所有者不明の土地を使いたい自治体や民間業者が都道府県知事に申請し、地元の市町村などの意見を聞いた上で明確な反対が出なければ、知事の裁定に基づき土地の利用を認めるというもの。

 5年程度の期限を定め、期限到来時にも所有者が現れなければ、利用権を更新します。

 利用目的は公園や広場、文化施設など公益性のある事業を想定しているとのことです。

 問題は、土地を利用してしまってから、本来の所有者が現れるケースです。

 国交省の案では、利用期間の賃料に相当する額を供託しておくことに加えて、所有者の同意を得られた時には利用を継続し、得られなければ原状回復して土地を明け渡すそうです。

 しかしすでに文化施設などが建ってしまっているものを原状回復するというのは現実味に乏しく、地元の理解を得られないケースも考えられます。

 複数人の土地にまたがっている時には調整が難航することも考えられ、個人の土地を都道府県が利用権の名のもとに〝徴用〟することにもなりかねないだけに、慎重な議論が必要となりそうです。

 不動産の権利登記は、相続などで所有者が変わっても名義変更の義務はないため、資産価値が低い山林などの不動産を相続した人は相続登記をせず、被相続人名義のまま放置することがあります。

 数十年が経って代が変わると、不動産登記を調べても本来の所有者が分からないケースも多く、公共事業の際の用地買収の障害となっています。


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2017年12月1日金曜日

【時事解説】商工会・商工会議所による中小企業支援

 中小企業の経営環境が厳しさを増す中、中小企業支援機関への期待が高まっています。

 中小企業支援機関の中でも商工会・商工会議所は、古くから全国の市町村において、地元に根差した中小企業支援を行っており、中小企業にとっては、幅広い相談に応じてくれる存在として認識されています。

 『中小企業白書2014年版』においては、商工会・商工会議所について聴取したアンケート調査の結果が示されており、まず、その強みについては、「地域に密着した『顔の見える』支援」、「幅広い相談に対応可能」、「小規模企業支援のノウハウを持っていること」などといった回答が多くなっています。

 一方で、商工会・商工会議所の課題については、「財源の不足」、「指導人員の不足」、「経営指導員の能力の差異」、「専門的知識の不足」などといった回答が多くなっています。

 こうした中、経営指導員の能力向上に向けて人材育成に取り組む事例もみられています。

 例えば、滋賀県商工会連合会では2009年度から県内22の商工会の職員に関する「人事制度改革」を本格的に実施し、経営指導員の能力向上に向けた取組みを推進しています。

 具体的には6段階の階級を整備してそれらに基づいた人事評価を行い、処遇や次年度に取り組む業務に反映させています。

 また、経営支援に必要な専門分野を8つ設定し、それらを年間に2分野ずつ、研修等による知識習得と現場での実践を組み合わせながらマスターしていく仕組みを構築しています。

 このように商工会・商工会議所では、経営指導員の能力向上のための研修制度の充実や、財源や人員不足を補完するための他の専門的な支援機関との連携が求められているのです。

 では商工会・商工会議所では具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。

 ここでは千葉県の木更津商工会議所の経営指導員による薬局の事業展開支援の取組みについてみていきましょう。

 木更津市で「エンゼル薬局」を経営する薬剤師が仕事を通じて地域住民の健康増進に取り組む中、無農薬、無添加で育てる市観光ブルーベリー園のブルーベリーを活用することに着目し、特産品のブルーベリーを活用したゼリーである「きさポン・ブルーベリーゼリー」を開発しました。

 このゼリーは一般的な市販のゼリーに比べ、ビタミン、カルシウム、ナイアシンなどといった多くの栄養素を含んでいます。

 こうした栄養素の高さなどが評価され、このゼリーは市立小中学校11校の給食で月1回ずつ提供されるなどの販路開拓にこぎつけました。

 今後は学校給食用への販路を木更津市周辺に向けて拡大したり、高齢者用、一般用の商品を新たに開発して販路を広げたりする方針です。

 こうしたゼリーの開発及び販路開拓には、木更津商工会議所の中小企業診断士資格を保有した経営指導員の支援が深く関わっています。

 商品化にあたっては、経営指導員のサポートによってちば農商工連携事業基金を活用することができました。

 また、千葉県の経営革新計画の承認を受けることで、公的支援の幅を広げることも可能となりました。

 このように商工会・商工会議所では、事業者の事業計画策定を支援しつつ、地方自治体や他の支援機関の支援制度の活用につなげるなどして、中小企業の製品開発・販路開拓の支援を行うことで、地域の中小企業の支援において中核的な役割を果たすことが求められているのです。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

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