2016年11月30日水曜日

日本公認会計士協会:2017年度税制改正要望を公表!

 日本公認会計士協会は、2017年度税制改正意見・要望書を公表しました。

 それによりますと、「政策的要望」と「個別的要望」に分類し、主としてわが国の税制の構造的問題に関して意見・要望を行う「政策的要望」では、税の中立性の原則に立脚し、IFRS普及の妨げにならないよう必要な法人税法改正を行うことなど合計8項目の意見・要望を行い、「個別的要望」では、税目ごとに合計60項目の意見・要望を行っております。

 政策的要望において、法人税法における課税所得計算と企業会計の調整について、

①税の中立性の原則に立脚し、IFRS普及の妨げにならないよう必要な法人税法改正を行うこと

②法人税法の改正に当たっては、企業会計の基準を十分に尊重することを要望しております。

 IFRSの国際的な普及が進むなか、企業が選択できる会計基準の幅が広がる一方で、税における損金経理要件が妨げとなり、この点、税の中立性を損なうおそれがあると指摘しております。

 そして、IFRS等の上場企業に適用される会計基準や法制度をめぐる論議を注視した上で、税務と会計が結果として異なることもあり得ることを前提に、別表上申告調整したものも会社の確定した意思表示として広く認めるなどの損金経理要件の見直しを弾力的に検討することを求めております。

 また、法人税法の改正にあたっては、企業会計の基準を十分に尊重し、会計と税務がいたずらに乖離することのないよう、見直し又は配慮も求めております。

 さらに、消費税の軽減税率制度及びインボイス制度については、

①消費者及び事業者が混乱しないよう軽減税率の対象品目の区別が明瞭な制度設計をすること

②軽減税率制度の導入に当たっては、新たな益税が発生しないよう配慮すること

③軽減税率制度とともに導入されるインボイス制度について、事業者において混乱のない導入可能な制度設計とすること

の3点を要望事項として掲げております。

 今後の税制改正の動向に注目です。

2016年11月29日火曜日

日本証券業協会など:2017年度税制改正を公表!

 日本証券業協会、投資信託協会、全国証券取引所の3団体は、2017年度税制改正を公表しました。

 それによりますと、NISA(少額投資非課税制度)及びジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)が国民の中長期的な資産形成手段として幅広く普及・定着するよう、非課税制度の恒久化を図ることや、金融資産の世代間移転を後押しする相続税等に関する税制優遇措置などを盛り込んでおります。

 「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、家計の自助努力による資産形成を支援するための税制措置として、NISA及びジュニアNISAに係る非課税期間の恒久化を要望しております。

 非課税期間の恒久化・延長が図られない場合には、非課税期間終了時の対応として、含み損商品の払出し時の取得価額の特例措置、ロールオーバーの上限額の撤廃、その他手続きの簡素化等の措置などを講じることを求めております。

 また、国民が中長期的な投資を行う環境を整備し、自助努力による資産形成を支援する観点から、両制度における口座開設期間の恒久化を求めております。

 さらに非課税期間の恒久化を前提として、NISA及びジュニアNISAにおけるスイッチング(取得した上場株式等の売却代金の範囲内での他の上場株式等の再取得)を認めること、払出し制限の緩和等及び贈与税の基礎控除額の特例等の措置も求めております。

 その他、デリバティブ取引を金融商品に係る損益通算の範囲に含めるとともに、特定口座での取扱いを可能とするなどの金融所得課税一体化の促進等や上場株式等の譲渡損失の繰越控除期間の延長、上場株式等の相続税評価額等の見直しなどの要望事項を盛り込んでおります。

 また、マイナンバー制度の導入に伴う税務分野での利用促進のため、個人番号を活用し、投資者の利便性を向上させる観点から、税務署において金融機関から提出された特定口座年間取引報告書等を適時に参照できる態勢が構築されることを前提として、顧客に交付される支払通知書又は特定口座年間取引報告書については、確定申告書への添付義務を免除することなども求めております。

 今後の税制改正の動向に注目です。

2016年11月28日月曜日

2つのはしご

 専門職の活躍が事業推進のカギを握っている企業では、よく“2つのはしご(複線人事)”を活用しています。

 “2つのはしご”は、等級制度に管理職系統と専門職系統の2つを準備し、賃金制度・人材育成制度などの人事賃金制度と関連付けて運用する“複線型人事制度”で、それに対置するのは昇進ルートを管理職系統のみとする“単線型人事制度”です。

◆“2つのはしご”が生まれた背景

 パラレルに設定される“2つのはしご”採用の背景には、次のように企業側・社員側それぞれのニーズがあります。

①企業が、市場・顧客・技術・法律など外部環境の変化に対応していくため、新商品・サービスの開発などに専門職の育成・活用が不可欠となってきたこと

②管理職系統だけの昇進制度だけでは、多様化した社員のロイヤリティーを維持することが困難になってきたこと

◆“2つのはしご”の姿

 通常、次の“2つのはしご”が用意され、それぞれ等級制度を基軸として、賃金制度・人材育成制度・評価制度・目標管理制度などと連動して運用されます。

①会社全体や部門の運営を司るポジションである管理職へのキャリアパス・管理職等級制度

②上記①とパラレルな位置付けで、担当分野における深い知識・技術・経験をもち、かつ担当事業領域で、相応の影響力を行使して貢献できるプロフェッショナルへのキャリアパス・専門職等級制度

③上記①②の等級は、「人の格付け」ではなく、「仕事の格付け」であり、職務内容の変更や、経営上の重要度が変われば、等級の変更が行なわれる「役割・職務等級制度」である

◆経営者・管理者の留意点

 “2つのはしご”を効果的に活用し、社員の活躍に結び付けるために次の点に留意しましょう。

①“2つのキャリアパス”にある個々の社員にとって、ストレッチな(努力してようやく手が届く)水準の目標設定へ誘導すること。

②「成果と貢献したプロセス行動の事実」に注目して、会社・部門目標への貢献度を基準として評価すること。

2016年11月25日金曜日

租税回避策、税理士に開示義務

◆租税回避とは

 日本での解釈としては、脱税は違法な行為、節税は予定された合法行為、租税回避は合法だが行為計算否認規定により不当な行為とされる可能性のあるもの、です。

 でも、完全親会社が子会社に自己株を取得させて欠損金創出をした上で更正期間経過後の欠損金利用可能期間に連結納税を選択したIBMには租税回避の意図は認められないと判決されています。

 他方、適格組織再編の特定役員引継要件を充たすための形式的な役員就任では役員の実質を備えていないとして、YAHOOは租税回避のための規定の濫用をしていると判決されています。

 両判決は、むしろ反対の結論だった方が整合性があります。

 一般に、租税回避は100%“NO”とも“YES”とも言い切れないグレーゾーンと解されており、その定義的解説はますます難しくなっています。

◆英語では

 英語でも、Tax Saving は節税の意味で、これが問題視されることはありません。

 それに比べ、英語でTax Avoidance と言われるものは、不当な租税回避行為、とのニュアンスで理解されているようで、日本語の租税回避よりもネガティブです。

 米国では、Tax Planningは大きな市場をもっており、Tax Planning商品のことをTax Shelterと言い、これには必ずしもネガティブなニュアンスはありません。

 米国では、Aggressive Tax Planning としての商品たるAbusive Tax Shelterと言われる、過激な、過度な Tax Shelterが問題視されています。

◆国際的潮流としての問題視

 2015 年10 月5日に公表されたOECDの「税源浸食と利益移転(BEPS)プログラム」の最終報告行動計画12 では、「Aggressive Tax Planning」について、政府への報告を義務化すべしとしています。

 最近の新聞報道によると、日本でも、租税回避策を実行したら、そのスキームを税務当局に報告すべしとの制度が来年度の税制改正で立法化されるようです。

 実施は2018年度からで、報告義務違反には罰則があり、租税回避策を作る税理士や租税回避策の提供を受ける企業が報告義務の対象になり、報告義務の有る税理士は顧客企業のリストの提出も求められます。

2016年11月24日木曜日

法定相続分の配偶者厚遇に反論続々

 法務大臣の諮問機関である法制審議会(高橋宏志会長)は、相続部会がまとめた中間試案のうち、配偶者の法定相続分を引き上げる案について、大幅に修正する方針を固めました。

 法務省が7月~9月にパブリックコメント(意見公募)を求めたところ、反対意見が多かったためで、同部会で引き続き議論し、来年中に意見をまとめて法相に答申します。

 中間試案では、

①配偶者の居住権保護、

②配偶者の相続分見直し、

③相続人以外の金銭請求、

④遺言請求の見直し

などが盛り込まれていました。

 このうち②の配偶者の相続分の見直しについて同部会で議論が継続されます。

 結婚から20~30年過ぎた配偶者は子どもと法定相続分を分ける割合を現行の2分の1から3分の2に引き上げるとされていましたが、これに加え、結婚後に夫婦の財産が増えた分に応じて、配偶者の相続分を増やす案も示されていました。

 これに対してパブリックコメントでは、「夫婦関係が破たんしていた場合も引き上げるのは良くない」「配偶者だけが財産増加に貢献したわけではない」などの意見が相次ぎました。

 相続法制の大規模な改正は1980年以来。2013年9月に最高裁が出した判断がきっかけです。

 最高裁は結婚していない男女の子(婚外子)の相続分を結婚した夫婦の子の半分とする民法規定を違憲と判断。

 判決を受け、民法改正が行われましたが、自民党から「正妻や子の権利が必要だ」との声が上がっていました。

 昨年2月、当時の上川陽子法相が相続に関する規定の見直しを法制審に諮問していました。

2016年11月22日火曜日

マルサが夜中もやってくる!

 国税当局は、脱税調査をする査察官が夜間でも強制調査できるようにするため、査察制度の手続きを定めた国税犯則取締法(国犯法)を改正する検討に入りました。

 今後、政府・与党の税制調査会に見直し案を示し、税制改正大綱に盛り込む方針です。

 国犯法は明治時代に定められ、条文はカタカナ表記のままです。

 国犯法では、日没から日の出までは強制調査をしてはならないと定められてきました。

 このため、裁判所の許可を得て、査察官が捜索や押収などの強制調査をしている最中に新たに捜索すべき拠点が見つかったとしても、日没までに手続きが間に合わなければ強制調査が翌日に持ち越しになってしまっていました。

 「弾力的な調査ができず、脱税証拠がなくなる可能性もある」(国税庁)との懸念が以前からあったのです。

 刑事訴訟法や独占禁止法、金融商品取引法などでは夜間の捜査・調査は認められていることから国犯法も見直すことになりました。

 調査対象に関係する郵便物が郵便局にあった場合、刑訴法などと同様に裁判所の許可があれば差し押さえできるようにもします。

 調査の質の向上につなげる考えです。

 また、新たにインターネット上に保存されているデータやメールなどの情報を押収して調査できる権限も設けます。

 最近の脱税事件は、国際化が進むなど複雑になっているうえに証拠となるデータのやり取りも書類ではなく、ネット上で行われるケースが増加。パソコンなどの機器を押収してもデータはインターネット上にあって捉えきれないこともあります。

 現在は任意でネットサービスを提供する企業などにデータを提出してもらっている状態のため、法律に定めて明確化します。

 なお、刑訴法ではすでに対応済みです。

2016年11月21日月曜日

日本商工会議所:2017年度税制改正要望を公表!

 日本商工会議所は、2017年度税制改正要望を公表しました。

 それによりますと、非上場株式の評価額は、企業価値を高めるほど上昇しますが、換金性がない非上場株式に課される相続税は、中小企業の成長に必要な経営基盤の承継を阻害することから、取引相場のない株式の評価方法、事業承継税制の抜本的見直しが必要としております。

 中小企業の事業承継の円滑化に向けた税制措置の拡充として、事業継続を前提とした、配当重視の評価方法への抜本的見直しを要望しております。

 中小企業にとって、自社株式の財産価値は、議決権と配当期待権以外になく、事業承継時の非上場株式は、会社の清算を前提とした貸借対照表上の純資産によったアプローチではなく、配当還元方式の適用拡大など、議決権の保有によって生じる配当を重視した評価方法とすべきとしております。

 そして、現行の取引相場のない株式の評価方法において、下記の改善点を示しております。

①類似業種比準価額方式の見直し(類似業種の比準要素、平均株価の対象期間、利益比準3倍等)

②純資産価額方式は、負債の範囲を見直し、退職給与引当金、賞与引当金を含める

③同族株主判定の際に基準となる6親等内の血族(はとこ)、3親等内の姻族(配偶者の甥・姪)は、親族関係が希薄化した現在では馴染まないため、同族判定範囲を縮小

 また、事業承継税制の抜本的な見直しについて、現行、納税猶予割合が約5割では効果が弱く、利用が進まないことから、発行議決権株式総数2/3制限の撤廃や、納税猶予割合の100%への引上げ、兄弟等複数人での承継の納税猶予への対象化を要望しております。

 さらに、人手不足下での厳しい採用環境や、大規模な災害や急激な経済の悪化等により雇用維持が困難となるケースに対応した雇用維持要件の一層の緩和を求めております。

 その他、2017年度改正において見直しの焦点となりそうな配偶者控除については、基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除を一本化し、所得額によらず税負担の軽減額が一定となる税額控除制度へ移行すべきとしております。

 今後の税制改正の動向に注目です。

2016年11月18日金曜日

豊洲市場問題で注目「土壌汚染」 土壌汚染がある土地の会計処理

◆都・築地市場の豊洲新市場への移転を延期

 東京都の豊洲市場問題(盛り土問題)。

 小池都知事は、「都民ファースト」の観点から

①安全性への懸念、

②巨額かつ不透明な費用の増加、

③情報公開の不足

の3つの疑問点が解消されていないことを理由として新市場の移転を延期しました。

 肝心の「汚染が解消されているのか」という点も専門家により、かなり意見が異なるようですね。


◆大法人では「土壌汚染」は減損テスト対象

 法人所有の土地でも、土壌汚染対策法に規定するような「土壌汚染」のあることが判明すれば、汚染除去義務が課せられます。

 こちらも除去費用も多額に生ずることになり、土地利用も制約され、当然、土地の価格の下落要因となるでしょう。

 大法人では、このような状況を財務諸表に反映させるための会計処理が用意されています。

 一つは減損会計です。

 資産の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合に、貸借対照表の帳簿価額に価値下落を反映させる手続のことです。

 土壌汚染がある土地は減損テストの対象となります。


◆資産除去債務or引当金の計上も必要

 二つ目は資産除去債務の計上です。

 資産除去債務とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって、その除去時に法令や契約により要求される除去コストです。

 この除去コストを現在割引価値で貸借対照表の負債に計上するとともに、この債務に応ずる除去費用を、その有形固定資産の簿価に上乗せします(償却資産の場合は減価償却で費用化)。

 もし、減損会計と資産除去債務のどちらも対象となる場合には、除去費用部分を二重に認識しないように、減損会計の計算上、将来CFを計算します。

 最後は、引当金です。

 土地汚染の浄化義務が資産の除去時でないときや通常の使用によらないとき、法令等で要求されていないときは、資産除去債務に該当しません。

 このような場合でも、発生の可能性が高く、金額が合理的に見積もることができるときは、引当金を貸借対照表の負債に計上することになります。


◆税法や中小企業会計では?

 これらの処理は公正妥当な会計処理であっても、現行の法人税法では認められていませんので、税務は税務で考えることになります。

 中小企業会計指針では固定資産の減損(相当の減額)は求められていますが、資産除去債務は強制されていません。

2016年11月17日木曜日

退職金は何のためにあるのか

◆適年廃止後の退職金制度はどうなってる?

 長期勤務に対する報奨と理解されている退職金制度ですが、中小企業の多くが利用してきた税制適格年金制度(適年)の廃止から4年半、この制度を導入していた企業は「中小企業退職金共済制度」(中退共)へ移行した企業が一番多かったようです。

 また、平成26年度の法改正でそこから5年で多くの厚生年金基金は解散してゆくことになっています。

 厚生年金基金を退職金の一部にしている企業ではこの対策も考える必要があります。


◆退職金制度のメリット・デメリット

 退職金は企業と従業員の労働契約により支払われる賃金制度の一部です。

 そうならば給与や賞与で払えば退職金は支払わない選択もあるでしょう。

 その分給与水準を高くし、月々の給与に退職金額を上乗せした前払い退職金制度にしているところもあります。

 但し社会保険料が上がり毎月の給与額も時間と共に当然と感じてしまい、給与を高くした意味が薄れることもあり得ます。

 厚労省の調査によると、従業員30人以上の企業では7割5分が退職金制度を導入しているそうです。

 導入のメリットとしては、良い人材の確保のしやすさ、長期的勤務推進策、定年や早期退職の円滑化策、不況期の雇用調整、従業員の不法行為の制御、退職者の競業避止義務や守秘義務の対価として等があります。

 従業員側は退職後の必要費用を賄う、企業への満足度の高まり、入社時の決定理由、長期勤務がメリット、税制上の優遇措置等があります。

 一方デメリットとしては経営状態にかかわらず一時的に多額の支払いが生じる場合があるので、決算や資金繰りに悪影響を与えることがあります。

 また、運用悪化等があれば積立額のチェックも必要になります。


◆退職金の資金準備

 複数の退職者が一度に発生すると企業にとって退職金の負担は大きくなり、多額の現金が必要になることは資金繰りを悪化させるおそれもあります。

 予め手当てしておくことは大切です。

 どこに資金をプールするかと言うと、先の調査では社内準備約6割強、中退共約4割、特退共やその他が少しあります。

 社内準備は銀行と生命保険の利用があります。

2016年11月16日水曜日

非正規雇用者数が3%増加

 国税庁が公表した民間給与実態統計調査によると、非正規雇用者の割合が高まっていることや、企業規模による給料格差が根強く残っていることが明らかになりました。

 1年通じて勤務した給与所得者は4794万人で、前年に比べて0.8%増加しています。

 一人当たりの給与は420万4千円で、平成24年の408万円を底に3年連続で前年から増えました。

 給与所得者のうち、正規雇用者は前年から1.2%増加して3142万人、非正規雇用は3%増加して1123万人と、非正規雇用者が大幅に増えています。

 正規雇用者の平均給与は485万円であるのに対し、非正規雇用者は171万円。

 アベノミクスで雇用が増えたとされますが、所得が比較的少ない非正規雇用者の増加が雇用を押し上げているようです。

 平均給与を資本金別にみると、資本金2千万円未満の会社は359万6千円(前年352万5千円)だったのに対し、1億~10億円は460万5千円(同451万7千円)、10億円以上は577万8千円(同578万8千円)と、規模の差によって依然大きな開きがあることが分かります。

 従業員人数別でみても、従業員10人未満の会社は337万2千円(前年330万6千円)でしたが、1千~5千人の会社は491万8千円(同485万7千円)、5千人以上は503万2千円(同507万8千円)で、中小企業がなかなか賃上げに踏み切れない状況であることを示しています。

2016年11月15日火曜日

個人型DCの愛称が「iDeCo」に

 全国銀行協会や生命保険協会など金融関連団体で組織する「確定拠出年金普及・推進協議会」は、個人型の確定拠出年金(DC)の愛称を「iDeCo(イデコ)」に決定したと発表しました。

 金融機関はすでにこの愛称を使って自社商品のPRを始めています。

 「iDeCo」は個人型確定拠出年金の英語表記の単語の一部で構成されたもの。

 4351件の応募のなかから30代女性の案が選ばれました。

 「i」には「私」という意味が込められていて、協議会は「自分で運用する年金の特徴をとらえている」と評価しました。

 確定拠出年金は、毎月決まった額を拠出し、その積立金を基に本人が資産運用し、損益が給付額に反映される年金制度。

 将来の給付額が決まっている確定給付年金と異なり、毎月どれだけ支払うかは定められている代わりに、将来もらえる額は確定しません。

 投資時や年金受取時には税優遇が受けられます。

 個人で入る「個人型」と会社ごとに入る「企業型」があり、来年以降、これまで自営業者や企業年金のない会社員が対象だった個人型につき、主婦(加入対象約400万人)や公務員(同900万人)、すでに企業年金に入っている会社員(同1300万人)が加わることになります。

2016年11月14日月曜日

被相続人のマイナンバー不要に

 今年1月1日以降の相続税申告書には被相続人のマイナンバーを記載する必要がありましたが、10月以降に提出する申告書からは記載が不要になりました。

 マイナンバー制度の導入に伴い、今年1月1日以降に相続・遺贈で取得した財産に掛かる相続税の申告書には、被相続人のマイナンバーを記載することとされていました。

 しかし、納税者から国税当局に対し、「故人から相続後に個人番号の提供を受けられないし、相続前に個人番号の提供を受けるのは親族間であっても抵抗がある」といった意見が寄せられたそうです。

 そこで当局は関係省庁と協議。新たな通達によってマイナンバーの記載を不要とし、9月30日に「相続税の申告書への被相続人の個人番号の記載にかかる取り扱いの変更について」とした文書によって納税者に周知しました。

 マイナンバー制度の開始からわずか9カ月で取り扱いが変更されたことになります。

 国税庁は、改訂前の申告書様式を使うときは被相続人の個人番号を記載せず、空欄で提出するように呼び掛けています。

 また、すでに提出した申告書については、税務署がすべて個人番号欄を黒塗りにするとしています。

2016年11月11日金曜日

印紙貼り忘れで過怠税3千万円超え

 兵庫県警の警察官や職員らを組合員とする金融機関「兵庫県警察信用組合」(神戸市)が、課税文書への収入印紙への貼り忘れで、約2900万円分の印紙税を納めていなかったことが分かりました。

 その後、印紙税の規定に従い過怠税約3100万円を納めたものの、もし気付くのがさらに遅れていれば、税負担は9千万円近くになっていた可能性もあります。

 印紙税は、不動産契約書や手形、領収書などの法で定められた取引文書について、記載金額に応じた額を納めなければならないもの。

 印紙税額は5千万円を超える不動産契約書であれば1通6万円を超えるため、額の大きい取引を多くこなす企業や団体であれば、印紙税の負担は巨額なものとなります。

 兵庫県警信組は、他の信用組合で同様の納付漏れがあったため内部調査をして、疑わしいものがあったので税務署に相談したところ、納付漏れを指摘されたとのことです。

 信組が納付していなかったのは、昨年11月までの3年間に扱った住宅ローンの申込書にかかる税金。

 印紙税の規定上、住宅ローン申込書はおおむね非課税ですが、同信組の作成した書類は名称が「申込書」であっても実際には契約成立を意味する文言が盛り込まれていたため、課税文書に当たる実質上の契約書と認定されました。

 印紙税の納付漏れにかかる過怠税は、納付していなかった税額の1.1倍です。

 そのため信組は、不納付2900万円の1.1倍に当たる約3100万円を納めました。

 1.1倍というのは、あくまで調査を受ける前に自発的に納付漏れに気付いて納めたときの話で、税務署などの調査によって発覚したケースだと、過怠税はなんと当初の税額の3倍になります。

 もし課税当局の指摘によって初めて気付いていた場合、同信組が納めなければならない税額は2900万円の3倍に当たる8700万円となっていたわけです。

2016年11月10日木曜日

厚生労働省:2017年度税制改正要望を公表!

 厚生労働省は、2017年度税制改正要望を公表しました。

 それによりますと、医療機関の設備投資に関する特例措置の創設などを要望しております。

 具体的には、都道府県で策定された地域医療構想に沿った病床の機能分化・連携に資する医療機関が取得した一定の固定資産について、2年間の特別措置として特別償却または税額控除制度を選択適用できるようにします。

 医療機関における収入の大半は社会保険診療報酬ですが、社会保険診療は消費税の非課税取引であるため、仕入れた医薬品や医療器具・備品、充実した医療の提供に欠かせない医療機器をはじめとする設備投資にかかった消費税を転嫁することができません。

 こうした控除対象外消費税の負担が医療機関の利益を圧迫し、設備投資を抑制する一因になっているといわれております。

 一方で、各都道府県では今後、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、「地域医療構想」に基づいて病床の機能分化や連携を進めていくこととされております。

 地域医療構想とは、医療機能ごとに2025年の医療需要と病床の必要量を推計し、地域の実情に合わせた方向性を定めていくもので、2014年にできた医療介護総合確保推進法に基づいて各都道府県が策定を義務づけられております。

 外来は掛かりつけの診療所へ、入院は病院へ、病状が深刻なら大病院へ、といった役割分担をすることで、医療機関の混雑を緩和し、患者が状態にふさわしい医療サービスを受けられるようにする狙いがあります。

 また、医療機関の税負担軽減については、現状、診療報酬改定や取得価格500万円以上の高額な医療機器に対する特別償却制度で対応しているものの、医療機関の税負担は減っておりません。

 その他、厚生労働省では、医療の公共性に配慮した消費税の適切な負担について抜本的な解決を図るべく、医療にかかる消費税制のあり方を総合的に検討することや、上記の高額な医療用機器に係る特別償却制度の2年間の期間延長もあわせて要望しております。

 今後の税制改正の動向に注目です。

2016年11月9日水曜日

国土交通省:2017年度税制改正要望を公表!

 国土交通省は、2017年度税制改正要望を公表しました。

 それによりますと、訪日外国人旅行者が酒蔵で購入する酒類に係る酒税を免税とする制度の創設を盛り込んでおります。

 これは、消費税が免税となる輸出物品販売場の許可を受けた酒蔵の日本産酒類の全品目が対象で、消費税に加え酒税を免税とすることにより、訪日外国人旅行者に全国各地で日本の酒を体験してもらうことで地方における酒蔵ツーリズムを振興し、日本産酒類の認知度向上を通じた輸出促進を図るものとみられております。

 日本再興戦略2016では、クールジャパンの推進の一環として、訪日外国人旅行者等に対する酒蔵ツーリズム等のプロモーションの充実や免税店制度の活用がうたわれました。

 国土交通省では、2016年4月1日現在において、輸出物品販売場の許可を受けている酒蔵(酒類製造場)は45者あり、今後約200者が新たに輸出物品販売場の許可を受け、既存の45者とともに同制度の適用を受けると仮定した場合の減税規模を試算しております。

 減税規模は、「245者×192本(週4ケース販売と仮定した1ヵ月当たり販売本数)×86.4円(720ミリリットル清酒の納税額)×12ヵ月」として、年間約0.5億円と試算しております。

 また、2014年度税制改正で外国人旅行者向け消費税免税制度が拡充され、免税対象に飲食料品等の消耗品も加わったことから酒類の購入も増加しております。

 さらに国土交通省は、わが国の国際空港の到着時に購入する商品についても携帯品免税の対象とする見直しも求めております。

 これまでの携帯品免税制度は、海外旅行者の携帯品又は別送品のうち、個人的に使用すると認められるものに限り、例えば、入国者一人当たり酒類は1本760ミリリットル程度のものが3本までと範囲を定めて免税としておりますが、外国で購入していた免税品を、わが国の国際空港の到着時に購入できるようにすることで、航空旅客の利便性向上や免税品購入の外国から国内への取り込みを図るものとみられております。

 今後の税制改正の動向に注目です。

2016年11月8日火曜日

三世代同居リフォームの減税制度

住宅ローン控除と特別控除の2制度創設

☆三世代同居リフォームに減税制度創設!

 平成28年4月より「住宅の多世代同居改修工事に係る特例」制度がはじまりました。

 この制度は、子育て支援・介護支援の一環として、三世代同居のために住宅のリフォームを行おうと考えている方を後押しする目的で設けられた減税制度です。

 平成25年に内閣府が行った意識調査によれば、「祖父母の育児や家事の手助けが望ましいか」という問いに対して、実に78.7%が「とてもそう思う」「ややそう思う」と答えています。

 三世代同居を「理想の家族の住まい方」と答えた方も、20.6%いらっしゃったようです。

 ただ、現実には、総世帯に占める三世代同居世帯の割合は昭和61年の15.3%から平成25年には6.6%と減少しています(厚労省・国民生活基礎調査)。

 このような状況の中、世代間の助け合いによる子育てしやすい環境整備を図るため、税制上の特例措置が講じられました。


☆住宅ローンの有無で2つの制度

 実際に「三世代で住もう」とした場合には、住環境の整備が必要です。

 この場合、キッチン、トイレ、浴槽等の水廻りを増設することが一般的であり、概ね250万円がかかると国土交通省では試算しています。

 そこで、「特定増改築等に係る住宅借入金等特別控除」と「既存住宅の特定改修の場合の特別控除」に追加する形で2つの減税制度が設けられました(選択適用)。

①住宅ローンあり(借入期間5年以上)

住宅ローン年末残高×控除率

〔控除率〕

増改築工事全体(1千万まで)…1.0%

うち三世代同居改修工事(250万まで)…2.0%

 この制度では、年間で最大125,000円(250万円×2%+750万円×1%)の控除を5年間受けることができます。


②住宅ローンなし

標準的な工事費用(単位当たりの標準費用×改修箇所)×10%(最大25万円)



☆対象となる三世代同居改修工事

 どちらも対象となる三世代同居改修工事は、

①調理室、

②浴室、

③便所、

④玄関

のいずれかを増設し、改修後は①~④のいずれから2つ以上が複数になるものになります(補助金控除後の工事費用・標準的な工事費用が50万円超のものに限ります)。

2016年11月7日月曜日

株主名簿の整理方法 株主を確定させるには

◎10月から「株主リスト」の添付が必要に!

 商業登記規則等の一部を改正する省令(平成28年法務省令第32号)が平成28年10月1日から施行され、株式会社等が、株主総会の決議を要する事項について法務局に登記申請をする場合、「株主リスト」の提出が必要になりました。

 この場合の「株主リスト」は、議決権の多い株主上位10名、又は、議決割合3分の2以上の株主に関する「氏名又は名称及び住所、株式数並びに議決権数等」を記載した書面で、株主名簿に類似するもの、とされています。


◎株主が分散している可能性も

 株主名簿が整理できていれば「株主リスト」の作成は容易ですが、場合によっては、自社で把握している以上に株主が分散している可能性もあります。

 たとえば株主が死亡した場合、株は相続人に相続されますので、相続人が複数いる場合は株主が分散することになります。

 相続以外にも、相続税対策のために株の譲渡を行った場合や、従業員に自社の株を保有させる「従業員持株」、取引先と株の持合いを行っている場合など、株主が分散する可能性は様々です。

 株主の情報については法人税確定申告書の「別表二」に記載がありますが、この記載に最新の情報が反映されていない場合、どのように株主を確定すれば良いのでしょうか。


◎株主の確定方法

①原始定款を確認する

 定款とは、会社の基本規則を定めた書類で、会社の設立当初に作成したものを特に原始定款と言います。

 ここには設立当初の株主が記載されていますので、地道な作業にはなりますが、この情報から株主を辿ることができます。

 もし手元に原始定款がない場合は、設立時に定款の認証を行った公証役場に行けば謄本を取得することができます。

 公証役場での保存期間は20年です。

②法務局で登記添付書類を閲覧する

 設立時、法務局で登記申請を行った際の添付書類には当時の株主(発起人)の氏名と住所、引き受けた株数が記載されています。

 法務局での保存期間は5年ですので、最近設立された会社であればこの方法で確認することもできます。

 これまであまり株主名簿を利用する機会がなかった会社も、今後は利用頻度が増えることが見込まれます。

 常に最新の株主情報を把握するよう努めたいですね。

2016年11月4日金曜日

内閣府:2017年度税制改正要望を公表!

 内閣府は、2017年度税制改正要望を公表しました。

 それによりますと、少子高齢化対策や子供の貧困対策の推進などに向けた事項を盛り込んでおります。

 少子高齢化対策の推進では、まず遠くに住む男女が結婚する場合、婚姻費用等を所得税の特定支出控除の対象に追加することを求めております。

 特定支出控除は、給与所得者が特定の支出をした場合において、その金額が給与所得控除の1/2を超える場合に、その超える金額をさらに給与所得控除後の給与所得の金額から控除できます。

 要望では、少子高齢化が深刻化するなか、結婚の段階における支援の充実策として、相互に遠方に居住する男女が婚姻する場合において、

①婚姻に伴う同居のため、双方の勤務地に通勤可能な範囲内に転居する場合の転居費

②仕事の都合により婚姻後も同居できない場合の旅費を特定支出控除の対象に加えております。

 これにより、相互ともに遠方に居住する男女が、就業継続しつつ、結婚の希望を叶えられるような環境整備が可能になるとしております。

 また、待機児童の解消に向けて、保育所等の敷地として貸与されている土地を相続した場合又は贈与を受けた場合において、その後もその土地を引き続き一定期間保育所等に貸与することを要件に、相続税・贈与税を非課税とすることや仕事と家庭を両立しながら女性の活躍を促進する等の観点から、ベビーシッター等の子育て支援のサービスを利用した場合の一部費用について税制上の所要の措置を講ずるよう要望しております。

 子供の貧困対策では、生まれ育った家庭の環境や貧困の連鎖等によって、子供達の将来が閉ざされることを防ぐ観点から、貧困の状況にある子供に贈与した場合には、孫等に限らず、贈与税を非課税とするなど教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置の拡充も盛り込んでおります。

 さらに、民間資金等活用事業推進機構について、2017年4月1日から2028年3月31日までの間に開始する各事業年度の事業税に限り、法人事業税の資本割に係る課税標準額を銀行法施行令で定める銀行の最低資本金の額(20億円)とみなす特例措置の創設や酒類の製造免許に係る最低製造数量基準の適用除外なども盛り込んでおります。

 今後の税制改正の動向に注目です。

2016年11月2日水曜日

「生計を一にする」の定義

◆「生計を一にする」の解釈

 「生計を一にする」という用語は、多くの税法で用いられています。

 ただし、税法そのもので、その定義はされていません。

 解釈通達での定義で済ませています。

◆法人税法では

 法人税法では政令の同族関係者の範囲の規定で「生計を一にする」という用語が出てきます。

 法人税基本通達は、「生計を一にする」こととは、「有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいうのであるから、必ずしも同居していることを必要としない」とし、要約的に表現しています。

◆国税通則法・国税徴収法では

 国税通則法基本通達では、「生計を一にする」とは、「納税者と有無相助けて日常生活の資を共通にしていることをいい、納税者がその親族と起居をともにしていない場合においても、常に生活費、学資金、療養費等を支出して扶養しているときが含まれる。

 なお、同一家屋に起居していても、互いに独立し、日常生活の資を共通にしていない親族は、生計を一にするものではない。」と定めています。

 国税徴収法基本通達は、前半が同文で、「なお」以下部分は、「なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。」と逆の側面からの規定になっています。

◆関係の多い所得税法では

 所得税法では、専従者関係の規定、雑損控除・医療費控除・各種保険料控除・人的控除などの所得控除の規定、その他多くの規定で「生計を一にする親族」の判定が係ってきます。

 しかし、所得税基本通達での概念規定は、法人税、通則法、徴収法の各通達と異なり、「有無相助けて日常生活の資を共通にしていること」の概念の内包部分がありません。

 外延としての「なお」以下部分は、「同一の家屋に起居していること」のほか、別居であっても「同一の家屋」が起居のために帰るべき場所であったり、別居先に「常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合」も含まれる、としています。

2016年11月1日火曜日

百億円でも配偶者だけなら無税

◆配偶者の税額軽減

 相続税では配偶者に対する税額軽減措置があります。

 被相続人の配偶者が取得した相続財産の課税価格が1億6千万円以下、又は配偶者の法定相続分相当額以下である場合には、配偶者に相続税はかかりません。

 もし、相続人が配偶者のみの場合はどうなるのでしょうか。

 相続人が配偶者のみの場合には、配偶者の法定相続分は100%です。

 そうすると、相続財産が100億円とか1兆円とかの場合にも、税負担額はゼロということになります。

◆相続人が配偶者のみという状態

 相続人が配偶者のみという状態は、親や子や孫、そして兄弟姉妹や甥姪もいない被相続人だったという場合だけでなく、他の相続人が相続放棄をした、又は他の相続人が相続欠格・相続廃除になった、という場合にも起き得ることです。

◆相続放棄の結果の配偶者単独相続

 相続放棄者は、遡及的に相続人でなかったものと扱われ、その子供たちの代襲する権利もないものとされます。

 しかし、これは民法の扱いで、相続税法では、相続放棄は原則としてなかったものとして取り扱われます。

 従って、相続放棄があったことの結果としての配偶者の単独相続では、配偶者の法定相続分は100%にはなりません。

◆相続欠格・相続廃除とは

 相続欠格・相続廃除も、相続人資格喪失事由です。

 相続欠格には、被相続人または競合相続人を死亡させようとしたり、被相続人に遺言書の作成や変更を詐欺や強迫によって強制したり、妨害したり、作成済み遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿をした場合が該当します。

 相続廃除には、被相続人に対する虐待・侮辱及び本人の著しい非行を原因とする家庭裁判所の廃除審判が必要です。

 生前の廃除申立と遺言による廃除申立があります。

◆相続欠格・相続廃除は民法どおり

 なお、相続欠格・相続廃除の場合には、欠格・廃除とされた者の子供たちの代襲相続権は消滅しません。

 相続欠格・相続廃除の結果は逆に、法定相続人が増えることになる場合があります。

 相続欠格・相続廃除の結果として配偶者の単独相続が生じた場合には、相続税法に別段の規定がないので、民法通りとなり、配偶者の法定相続分は100%です。

 この場合には、税負担額はゼロということになります。