2015年12月1日火曜日

「核融合発電」という次世代エネルギーの可能性



 8月、岐阜県土岐市にある核融合発電の実験施設で火災による死亡事故がありました。原因は、施設内のパイプを修理するため、溶接作業をしていたところ、パイプに巻かれていた断熱材に引火したといいます。
この事故により「核融合発電」という名を知った人も多いと思います。これは、原発に代わる夢の次世代エネルギーといわれ、1940年代から世界各国が研究を進めているものです。日本でも、古くから研究に取り組み、2020年代の実用化に向け、研究はあと一歩のところに来ているといわれています。発電の方式は太陽と同じ、核融合(二つの核が着いて融合、一つになる)のときに生じるエネルギーを用いて発電します。

核融合発電は名前に「核」が銘打たれ、原発を連想させますが、原発と比べると遥かに安全性が高いといわれています。原発は事故が起こると場合によっては制御不能になり暴走することもあります。核融合発電は、ガスコンロと同じで、燃料の供給を止めるとそのまま沈静化するといわれています。また、核廃棄物も生じないので、核のゴミに関する処理も不要です。

夢のエネルギーといわれているのは、もう一つ理由があります。原材料が海水からとれるため、石油や石炭のように、いずれ枯渇する心配がないためです。また、太陽光や火力発電などと比べて、出力が大きいところも特徴です。燃料1グラムから石油8トン分のエネルギーが取り出せます。
もちろん、地球環境への負荷も火力発電と比べて格段に軽くなっています。核融合発電という夢が実現すれば、エネルギーに関する問題が一気に解決すると考えられます。

 夢の次世代エネルギーといわれる核融合発電ですが、実用化に向けて課題も残っています。第一の課題はコストです。現在では、発電所を一基建設するのに、数兆円のお金がかかるといった試算もあります。将来的にはコストダウンは可能と考えられます。とはいえ、建設費はそのまま電気代に跳ね返るため、現在と同じ水準の電気代になるには、年月がかかりそうです。

もう一つの課題は安全性にあります。原発と比較すると、核融合発電ははるかに安全性が高いのですが、全く危険がないとはいえません。原料の一つ、三重水素(トリチウム)は放射性物質の一種です。体内に取り込まない限り危険性は少ないといわれていますが、人体の許容量の10倍を体内に入れると、卵子のもととなる卵細胞の半数が死滅します。場合によっては不妊の原因になるわけです。

ただ、突き詰めれば、どの発電の方式も完璧なものはなく、何らかのデメリットはあります。たとえば、火力発電は地球温暖化に繋がる、太陽光発電は日射量に左右されるなどの欠点はあります。そのなかで、デメリットとメリットを天秤にかけたとき、核融合発電は比較的メリットのほうが多くあります。

現在、世界では、日本のほか欧州連合、ロシア、米国、韓国、中国、インドが共同でプロジェクトを立ち上げて研究を進めています。日本は、主要な技術を有しており、今後、実用化された時、利益の源となりそうです。既に、昨年、古河電気工業は核融合発電の実験で用いる超電導ケーブルを受注しました。受注総額は約25億円と大きく、今後、ビジネスの好機の一つとなりそうです。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)