2015年5月1日金曜日

『調査手続』と『事前通知』の見直し

『調査手続』の見直し
平成27年度の国税通則法の調査手続の改正(国通法74の11)により、①実地調査の結果の「更正決定をすべきと認められない通知」の後、②国税に関する調査の結果、修正申告、期限後申告の提出、もしくは源泉徴収による所得税の納付があった後、③更正決定等をした後、すなわち、①~③の処理後に再調査のできる要件としては、実地の調査のうえ「新たに得られた情報に照らし非違があると認めるときは」、再調査の実施ができることに規定されました。

この再調査規定は「税務調査は、納税義務者の負担の下において実施され、調査により既にその年分の課税標準等については、確認・是正がなされたはずであるとの考え方から、調査の終了した事案について再び質問検査等を行うためには、当初の調査の際には有していなかった『新たな情報に照らしての非違』が入手された場合に限定するもの」という考え方に基づくものといわれています。
そうすると、例えば所得税の確定申告に医療費控除の過大計算誤りがあり、税務署長等の行政指導により修正申告を提出した納税義務者については、その納税義務者は税務調査により確認、是正をなされた者に該当しないことから税務署長等は、質問検査権を保有していることになります。
これに対して、その行政指導に応ぜず、修正申告にも応じない納税義務者に対しては、やむを得ず更正処分を行うことになりますが、この更正処分が法律上調査により確認、是正がなされたものとされ、税務署長等は質問検査権の行使があったものとして、再調査を行うにしても申告書記載以外の「新たな情報に照らしての非違」がなければ行使できないことになります。
このことは、憲法14条(法の下の平等)からも不合理であり是正すべきものです。従って、納税者の課税標準等又は税額等の確認・是正を実地の調査(納税者の事業所等に臨場して行う調査)に限定しようとする改正です。この改正は、平成27年4月1日以後に行う再調査について適用されます。
『事前通知』の見直し
税理士は、税理士法2条により税務代理権を有すると規定されています。平成24年度の国税通則法の改正により税務調査に係る事前通知は、納税者に発するとともに税務代理人にも発するように規定されました(国通法74の9⑤)。しかし、この規定は、実施の段階で混乱しているので改正するものです。
最近大型相続案件になると相続人も多数になり、又税務代理人の数も多数となります。この多数の税務代理人から、調査場所と調査日時の変更につき合理的理由を付して変更申立てがあった場合には、税務署長等は協議するよう努めるものと規定されています(国通法74の9②)。
そして、この合理的理由のなかに「業務上のやむを得ない理由」が含まれていますので、その日程調整等に時間を要し、実地の調査が遅延している状況にあります(手続通達4-6)。この打開策として打出されたものが、平成27年度改正の多数の税務代理人が存在している場合に、代表税理代理人を定めた場合には、その者に事前通知を行うという改正です(国通法74の9⑥)。この改正は、今後の実質的運用が鍵となると思われます。この改正は、平成27年7月1日以後の事前通知について適用されます。

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