2014年11月22日土曜日

【時事解説】親族外承継の後継者に求める能力

『2014年版中小企業白書』では、中小企業の事業承継について第三者承継に着目した分析を行っています。ここでいう第三者承継とは、経営者の親族以外の社内の役員や従業員に事業承継を行う内部昇格と、社外から後継者を招いて経営者とする外部招へいを合わせた親族外の第三者への事業承継をいいます。

同白書によると、我が国の事業承継の形態としては、依然として親族内への承継(親族内承継)が一番多いものの、長期的には親族内承継の全体に占める割合は低下しており、その反面、第三者承継や買収(事業売却)が占める割合が上昇しており、とくに2007年以降、第三者承継に買収を加えた事業承継形態の割合が、親族内承継を上回っています。

企業規模ごとの内訳の推移をみると、内部昇格については構成比に大きな変化はないものの、外部招へいについては、従業員10人未満の規模の小さな企業が占める割合が、近年上昇してきています。この背景には、少子化が進む中で、従業員数が少ない規模の小さな企業が、自社の中で後継者を確保することができずに、社外にまで後継者を求めている動きがあることが推察されます。

社外の第三者への事業承継を検討している者が、後継者候補にどのような素養や能力を期待しているかについてみると、「経営に対する意欲が高いこと」を挙げる者の割合が高くなっています。

さらに、親族内承継のケースと比べて事業を承継することの正統性に乏しい親族外承継の後継者においては、事業承継にあたり従業員や取引先・金融機関などの支持・理解を確保することも求められるのです。

では、実際に親族外による事業承継を行ったA社の取組みについてみていきましょう。


A社は、業務用洗剤・石鹸の製造とクリーニング用諸材料の卸売業という2つの事業を主力とする企業です。

A社の現社長は、取引先金融機関の勤務を経て当初は出向の形でA社に入社。入社後は「従業員が意見を出しやすい開かれた組織」をつくることを目指した取組みを始めました。そのためには外部から来た自分を理解してもらう必要があると考え、従業員や取引先等とのコミュニケーションにおいて「逃げない、隠さない、嘘をつかない」ことを心掛けました。

こうした取組みはこれまでのオーナー一族のトップダウン型の組織運営とは異なったものでしたが、次第に従業員にその考え方が浸透し、人心を掌握していきました。その後先代経営者が体調を崩したことを契機に、先代経営者から現社長に対し社長就任の要請があり、入社から3年経過後にA社の社長に就任しました。

社長就任後はカリスマ創業者ではなく創業者一族でもない自分が経営するには、プロパーの責任者クラスの人材を役員に昇格させて、一体となって経営する必要があると考え、役員の数を増やしました。また、経営会議においては将来のビジョンを伝えるとともに、開かれた組織づくりを意識しつつ幅広く権限委譲を行うことで、会社経営を担う中核的な人材の育成を図っていきました。

このように親族外承継の後継者においては、トップダウンではなく、個々の従業員の力を引き出し、組織的に企業を運営していく能力がより一層求められるのです。

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)